生命保険料控除の欄は、控除証明書を「一般・介護医療・個人年金」と「新・旧」に仕分けてから、欄の計算式に当てはめるだけで書けます。 令和8年分(2026年12月の年末調整)からは、23歳未満の扶養親族がいる人は、一般の生命保険料(新契約)の計算式が別になり、上限が4万円から6万円に上がりました。申告書の様式にも「年齢23歳未満の扶養親族の有無」と☆欄が加わっています。この特例は令和8・9年分のものです。3つの控除を合わせた上限は12万円のまま変わりません。ここでは、国税庁が公開している令和8年分の記載例に沿って、書く順番と計算の分かれ目を追います。
書き始める前にそろえるもの
- 保険会社から届いた令和8年分の生命保険料控除証明書(一般・介護医療・個人年金が別々の証明書になっていることもあります)
- 23歳未満の扶養親族がいる場合は、その人の氏名・個人番号・生年月日・続柄と、令和8年中の合計所得金額の見積額
- 勤務先から渡された「令和8年分 給与所得者の保険料控除申告書」(電子で出す会社は、その画面)
23歳未満かどうかは生年月日で決まります。記載例では「平成16年1月2日以後生」の人が対象と書かれています。
手順1:控除証明書を3つの区分と新旧に分ける
証明書には、保険の種類と、契約が新制度か旧制度かが書かれています。区分の考え方は次のとおりです。
| 区分 | 新契約 | 旧契約 |
|---|---|---|
| 一般の生命保険料 | 平成24年1月1日以後の契約 | 平成23年12月31日以前の契約 |
| 介護医療保険料 | 平成24年1月1日以後の契約 | 区分なし(旧の一般に入る) |
| 個人年金保険料 | 平成24年1月1日以後の契約 | 平成23年12月31日以前の契約 |
旧契約の医療保険や介護保険の保険料は、介護医療保険料ではなく「旧生命保険料」として一般の欄に書きます。証明書に書かれた区分に従えば迷いません。
書く金額は、証明書にある「その年に支払った保険料から剰余金や割戻金を差し引いた金額」です。支払った総額をそのまま書くと、控除が大きくなりすぎます。
手順2:一般の生命保険料の欄を書く
申告書の上段が一般の生命保険料です。保険会社の名称、保険の種類、保険期間、契約者と受取人の氏名、新・旧の区分、支払った金額を1行に1契約ずつ書きます。新契約の合計が「A」、旧契約の合計が「B」になります。
続いて、令和8年分から加わった「年齢23歳未満の扶養親族の有無」を選びます。「有」にした場合は、申告書下の☆欄にその扶養親族の氏名・個人番号・生年月日・続柄・合計所得金額の見積額を書き、住所が自分と違えばその住所も書きます。
手順3:計算式Ⅰ・Ⅱ・Ⅲから1つを選ぶ
申告書の下に3つの計算式が並んでいます。どれを使うかは、新旧と23歳未満の扶養親族の有無で決まります。
| 計算式 | 使う場面 | 上限 |
|---|---|---|
| Ⅰ(新保険料等用) | 新契約。23歳未満の扶養親族なし | 4万円 |
| Ⅱ(23歳未満の扶養親族がいる場合の新保険料等用) | 新契約の一般。23歳未満の扶養親族あり | 6万円 |
| Ⅲ(旧保険料等用) | 旧契約 | 5万円 |
中身は次のとおりです。1円未満の端数は切り上げます。
- 計算式Ⅰ:2万円以下は全額/2万円超4万円以下は×1/2+1万円/4万円超8万円以下は×1/4+2万円/8万円超は4万円
- 計算式Ⅱ:3万円以下は全額/3万円超6万円以下は×1/2+1.5万円/6万円超12万円以下は×1/4+3万円/12万円超は6万円
- 計算式Ⅲ:2.5万円以下は全額/2.5万円超5万円以下は×1/2+1.25万円/5万円超10万円以下は×1/4+2.5万円/10万円超は5万円
計算式Ⅱが使えるのは、新契約の一般の生命保険料だけです。介護医療保険料と新個人年金保険料は、23歳未満の扶養親族がいても計算式Ⅰのままです。
手順4:新契約と旧契約が両方あるときの比べ方
一般の生命保険料に新旧が混ざっているときは、申告書の欄の順に3つの数字を出し、いちばん大きいものを書きます。
- 旧契約(B)を計算式Ⅲに当てはめた金額
- 新契約(A)の控除額と、旧契約の控除額を足した金額(上限4万円。23歳未満の扶養親族がいれば6万円)
- 1と2のうち大きいほう
国税庁は同じことを、旧契約の支払額が6万円を超えるなら旧だけで計算する、6万円以下なら新旧を足す、と説明しています。どちらで考えても答えは同じになります。
記載例の数字で確かめる
国税庁の記載例では、新契約Aが80,000円、旧契約Bが35,000円で、23歳未満の扶養親族が「有」です。
- Aを計算式Ⅱに当てはめると、80,000円×1/4+30,000円で50,000円
- Bを計算式Ⅲに当てはめると、35,000円×1/2+12,500円で30,000円
- 足すと80,000円ですが、上限の60,000円で止まります
- 旧だけの30,000円より大きいので、一般の生命保険料控除は60,000円
23歳未満の扶養親族がいなければ、新旧を足した額の上限は40,000円で、旧だけの30,000円と比べて40,000円になります。同じ保険料でも、令和8年分は2万円多く控除されるということです。
手順5:介護医療・個人年金を書き、合計する
介護医療保険料は、証明書の金額(C)を計算式Ⅰに当てはめます(上限4万円)。個人年金保険料は、新契約(D)と旧契約(E)について、一般の欄と同じ比べ方をします(上限は4万円または5万円)。個人年金保険料の欄には、証明書で個人年金保険料とされている契約を書きます。
最後に、一般・介護医療・個人年金の3つを足します。合計の上限は12万円です。23歳未満の扶養親族がいて一般が6万円になっても、12万円を超えた分は控除されません。
年末調整で見落としやすい点
- 証明書を付け忘れる:保険料控除申告書には、控除証明書の添付か提示が必要です。電子で受け取った証明書は、勤務先が受け付ける形式を確かめてください。
- ☆欄を書かずに計算式Ⅱを使う:申告書には、「有」の場合は☆欄も書くよう指示があります。氏名だけでなく個人番号や所得の見積額も求められるため、家族に確かめてから書いてください。
- 会社の給与から引かれている保険料を書く:同じ申告書の社会保険料控除の欄は、国民年金保険料など自分で直接払った分だけを書きます。給与から差し引かれた社会保険料は書きません。iDeCoの掛金も、自分で払った分だけを小規模企業共済等掛金の欄に書きます。
- 保険期間5年未満の契約:国税庁は、保険期間が5年未満の生命保険などの中に控除の対象にならないものがあると注意しています。証明書が届かない契約は、対象外の可能性があります。
年末調整全体の数字の変わり方は、令和8年分の年収の壁の整理で、控除がどの欄に反映されるかは源泉徴収票の生命保険料の控除額の欄で確かめられます。
よくある誤解
- 「23歳未満の子がいれば、生命保険料控除は全部6万円になる」:上限が上がるのは一般の生命保険料(新契約を含む場合)だけです。介護医療・個人年金は4万円のままです。
- 「16歳未満の子は扶養控除がないから対象外」:特例の条件は「年齢23歳未満の扶養親族を有する」ことです。扶養控除の対象になる控除対象扶養親族は16歳以上ですが、扶養親族そのものには年齢の条件がなく、16歳未満の子も含みます。
- 「控除が増えた分だけ手取りが増える」:控除は所得から差し引く額です。減る税額は、差し引いた額に自分の税率を掛けた額です。所得税の税率は5%から45%までの7段階です。
- 「令和8年分だけの特例」:国税庁の年末調整の案内では、令和8・9年分の特例とされています。令和10年分以後の扱いは、その時点の改正で確かめる必要があります。
保険そのものの見直しを考えている人は、控除額より先に保障の中身を確かめるのが順番です。考え方は保険の見直しの順番にまとめています。
出典
- 国税庁「No.1140 生命保険料控除」
- 国税庁「令和8年分 給与所得者の保険料控除申告書の記載例」
- 国税庁「令和8年分 年末調整のしかた」昨年と比べて変わった点
- 国税庁「令和8年4月 源泉所得税の改正のあらまし」
- 国税庁「年末調整がよくわかるページ(令和8年分)」
- 国税庁「No.1180 扶養控除」
- 国税庁「No.2260 所得税の税率」
(いずれも2026年10月1日に確認)