年末調整の時期に勤務先から配布される書類は、複数の申告書に分かれていて、それぞれ役割が異なります。この記事では、令和7年分(2025年分)の年末調整を基準に、どの書類に何を書くのかを手順にそって説明します。
対象になる人と提出期限
年末調整は、毎年最後の給与を受け取るときまでに勤務先へ必要な申告書を提出することで行われます。提出期限は勤務先が指定しますが、多くの場合11月から12月上旬に設定されています。年の途中で退職した人や、給与収入が2,000万円を超える人などは年末調整の対象外で、確定申告で1年分の所得税を計算することになります。
必要な書類
- 前年から引き続き記入している場合は前年の申告書の控え(扶養親族の情報を再確認するため)
- 生命保険料・地震保険料・社会保険料(国民年金、国民健康保険など)・小規模企業共済等掛金の控除証明書
- 住宅ローンを利用している人は、金融機関から送られる「住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書」(1年目は確定申告が必要で、2年目以降のみ年末調整で使用)
- マイナンバー(本人・控除対象の家族分)
手順:3種類の申告書の役割
1. 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書
扶養している家族や、本人が障害者・寡婦・ひとり親・勤労学生に当たるかどうかなど、扶養控除・障害者控除等の判定に必要な情報を記入する書類です。控除対象扶養親族として記載できるのは、納税者と生計を一にし、その年の12月31日時点で16歳以上、合計所得金額が58万円以下(給与のみなら給与収入123万円以下)の親族です。この所得要件は、令和7年度税制改正により令和7年12月1日から48万円から58万円へ引き上げられています。
2. 給与所得者の保険料控除申告書
生命保険料控除、地震保険料控除、社会保険料控除(給与から差し引かれていないもの)、小規模企業共済等掛金控除(iDeCoなど)を受けるための書類です。保険会社等から送られてくる控除証明書の金額を、契約の種類ごとに記入します。マイナポータル連携を利用すると、生命保険料などの控除証明書データを自動で取り込める場合があります。
3. 給与所得者の基礎控除申告書 兼 配偶者控除等申告書 兼 特定親族特別控除申告書 兼 所得金額調整控除申告書
1枚の用紙にまとまっていますが、内容は4つの申告書を兼ねています。
- 基礎控除申告書:本人の合計所得金額の見積額を記入し、その金額に応じた基礎控除額(合計所得金額2,350万円以下であれば、令和7・8年分は58万円から95万円の範囲)の判定に使います。
- 配偶者控除等申告書:配偶者の所得の見積額を記入し、配偶者控除・配偶者特別控除の対象になるかを判定します。
- 特定親族特別控除申告書:令和7年度税制改正で新設された控除です。納税者と生計を一にする19歳以上23歳未満の親族で、合計所得金額が58万円超123万円以下(給与のみなら給与収入123万円超188万円以下)の人がいる場合に、所得に応じて最大63万円を控除できます。この控除を年末調整で受けるには、この申告書の提出が必要です。
- 所得金額調整控除申告書:給与の収入金額が850万円を超え、本人が特別障害者である場合や、23歳未満の扶養親族・特別障害者である家族がいる場合に記入します。
特定親族特別控除額の目安
特定親族特別控除の金額は、対象となる親族の合計所得金額に応じて段階的に決まります。国税庁の資料によれば、たとえば合計所得金額が58万円超85万円以下(給与のみなら給与収入123万円超150万円以下)であれば控除額は63万円、100万円超105万円以下(給与収入165万円超170万円以下)であれば31万円などとなっており、所得が上がるほど控除額は小さくなります。なお、合計所得金額が58万円以下の19歳以上23歳未満の親族は、この特定親族特別控除ではなく従来の特定扶養親族(扶養控除額63万円)に当たります。どちらに該当するかは、対象となる親族本人の所得の見積額によって変わるため、正確な金額が分からない場合は勤務先の担当部署に相談してください。
つまづきやすい点と相談先
- 記入時点では所得は「見積額」で構わないため、年の途中で見込みが変わった場合は、年末調整の際に改めて確認・修正します。
- 記入内容や控除の対象になるかどうかの判断に迷う場合は、勤務先の人事・給与担当部署、または最寄りの税務署に確認してください。
- 年末調整の内容を後から訂正したい場合、勤務先の事務処理の締め切りに間に合えば「年末調整の再調整」で対応できることがありますが、間に合わない場合は確定申告での対応になります。確定申告が必要な人・した方が得な人の分け方は、別記事「確定申告が必要な人・しなくていい人」で整理しています。
よくある誤解
- 「年末調整をすれば税金の手続きは全て終わる」: 医療費控除やふるさと納税(ワンストップ特例を使わない場合)などは年末調整では受けられず、確定申告が必要です。
- 「扶養親族の所得要件は毎年同じ」: 令和7年度税制改正により、令和7年12月1日から扶養親族等の合計所得金額の要件が48万円から58万円に変わっています。前年の書き方をそのまま参考にすると数字を誤る可能性があります。
- 「証明書をなくしたら控除は諦めるしかない」: 保険会社に再発行を依頼できますし、年末調整に間に合わなくても確定申告で控除を追加できます。
出典
- 国税庁タックスアンサー No.1180「扶養控除」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1180.htm
- 国税庁タックスアンサー No.1140「生命保険料控除」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1140.htm
- 国税庁タックスアンサー No.2676「年末調整で所得金額調整控除の適用を受けるとき」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2676.htm
- 国税庁「令和7年度税制改正(基礎控除の見直し等関係)Q&A」(令和7年5月30日) https://www.nta.go.jp/publication/pamph/gensen/0025005-051.pdf
- 国税庁「令和7年度税制改正による所得税の基礎控除の見直し等について」 https://www.nta.go.jp/users/gensen/2025kiso/index.htm
- 国税庁「年末残高等証明書が年末調整に間に合わない場合」(質疑応答事例) https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/shotoku/06/24.htm
(いずれも2026年9月26日に確認)