保険料を見直すとき、いきなり商品を比べ始める前に、公的な制度でどこまで賄えるかを先に数えると、本当に必要な保障の額が見えてきます。この記事では、医療費・休業中の収入・万一のときの3つの場面について、公的保障を数える手順を整理します。特定の保険商品の推奨は行いません。
誰が対象か・いつやるか
- 民間の保険(医療保険・生命保険など)に加入しているが、保障内容が今の生活に合っているか確認したい人
- 保険料が家計の負担になっており、見直しを考え始めた人
- 時期の目安: 商品の見直しの前、または保険の相談窓口に行く前
必要なもの
- 健康保険証(加入している医療保険の種類の確認)
- ねんきん定期便、または「ねんきんネット」の年金記録(厚生年金保険の加入期間の確認)
- 現在加入している民間の保険の契約内容(保障額・保険期間)が分かる書類
手順1. 医療費:高額療養費制度で賄える額を数える
厚生労働省の高額療養費制度は、医療機関や薬局の窓口で支払った額が、ひと月で上限額を超えた場合に、その超えた金額を支給する制度です。69歳以下の場合、所得区分に応じて上限額が決まっています。
| 適用区分(69歳以下) | ひと月の上限額(世帯ごと) |
|---|---|
| 年収約1,160万円〜 | 252,600円+(医療費-842,000円)×1% |
| 年収約770万〜約1,160万円 | 167,400円+(医療費-558,000円)×1% |
| 年収約370万〜約770万円 | 80,100円+(医療費-267,000円)×1% |
| 〜年収約370万円 | 57,600円 |
| 住民税非課税者 | 35,400円 |
※出典:厚生労働省保険局「高額療養費制度を利用される皆さまへ」。過去12か月以内に3回以上上限額に達すると、4回目から上限額がさらに下がる「多数回該当」もあります。
注意: 高額療養費制度の自己負担限度額の見直しについて、厚生労働省の審議会で検討が続いています(2025年12月時点の資料では、具体的な金額の方向性はまだ示されていません)。上の表は本記事執筆時点で適用されている金額です。今後見直される可能性があるため、加入している医療保険(健康保険組合・協会けんぽ・市町村国保など)の最新の案内も確認してください。
この制度で賄えないもの: 入院時の食費負担、差額ベッド代、先進医療にかかる費用などは、高額療養費制度の対象外です。民間の医療保険で備える範囲を考えるときは、この対象外の部分を中心に検討します。
手順2. 休業中の収入:傷病手当金で賄える額を数える
会社員などが加入する健康保険には、病気やケガで働けず、連続する3日間を含み4日以上休業した場合に支給される「傷病手当金」があります。全国健康保険協会の説明では、支給額は1日につき、支給開始日以前12か月間の標準報酬月額を平均し、30で割った額の3分の2です。支給期間は、支給を開始した日から通算して1年6か月(547日)です。
この制度で賄えないもの: 自営業・フリーランスなど、国民健康保険に加入している場合、傷病手当金にあたる制度は原則としてありません(自治体や制度によって扱いが異なる場合があります)。会社員でも、支給される期間(通算1年6か月)を超えて働けない場合の備えは別に考える必要があります。
手順3. 万一のとき:遺族年金で賄える額を数える
日本年金機構の説明では、亡くなった方の年金の加入状況によって、遺族基礎年金・遺族厚生年金のいずれか、または両方が支給されます(令和8年度の金額)。
- 遺族基礎年金: 子のある配偶者、または子が受け取れます。年額847,300円(昭和31年4月2日以後生まれの方の額)+子の加算額(1人目・2人目は各243,800円、3人目以降は各81,300円)
- 遺族厚生年金: 厚生年金保険に加入していた方が亡くなった場合、亡くなった方の老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3が目安の額です(生年月日や年齢によって計算が異なる場合があります)
受給できるかどうかは、亡くなった方の年金の納付状況や、遺族の年齢・優先順位などの要件をすべて満たす必要があります。
つまずきやすいところと問い合わせ先
| つまずく場所 | 確かめる先 |
|---|---|
| 自分の所得区分(高額療養費の上限額)が分からない | 加入している健康保険組合・協会けんぽ・市町村国保 |
| 傷病手当金の対象になるか分からない(自営業など) | 加入している公的医療保険の窓口 |
| 遺族年金の受給要件・見込み額を知りたい | 日本年金機構(ねんきん相談)、年金事務所 |
| 保険商品の説明を受けたい | 保険会社・保険代理店(ただし商品の提案をする立場であることを踏まえて聞く) |
よくある誤解
- 「保険は入っていれば入っているほど安心」: 公的保障と重複している部分があれば、その分の保険料は必要以上に払っている可能性があります
- 「高額療養費制度があれば医療保険は不要」: 差額ベッド代や先進医療費など、制度の対象外の費用もあります。何が対象外かを確認したうえで判断してください
- 「自営業も会社員も同じ公的保障がある」: 傷病手当金は主に会社員などが加入する健康保険の制度です。国民健康保険では原則ないため、公的保障の内容は働き方によって異なります
出典
- 厚生労働省保険局「高額療養費制度を利用される皆さまへ」 https://www.mhlw.go.jp/content/000333280.pdf
- 厚生労働省保険局「高額療養費制度の見直しについて」(令和7年12月25日) https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/001621844.pdf
- 全国健康保険協会「傷病手当金」 https://www.kyoukaikenpo.or.jp/benefit/injury_and_sickness_allowance/index.html
- 日本年金機構「遺族年金ガイド 令和8年度版」 https://www.nenkin.go.jp/service/pamphlet/kyufu.files/LK03-3.pdf
(いずれも2026年9月25日に確認)