確定申告書を作って出すだけなら、国税庁の「確定申告書等作成コーナー」で足ります。 画面の案内に沿って金額を入れると、申告書と必要な付表・明細書が作られ、e-Taxでそのまま提出できます。青色申告決算書や収支内訳書、消費税の申告書も作れます。ソフトを買ったり入れたりする必要はありません。足りなくなるのは、申告書を作る前の「日々の取引を帳簿につける」部分です。事業所得で青色申告65万円控除を受けたい人は、複式簿記の帳簿を別に用意する必要があり、そこで会計ソフトを使うかどうかの判断になります。つまり、選ぶ基準は「申告書を作れるか」ではなく「帳簿をどこでつけるか」です。

作成コーナーでできること

国税庁の作成コーナーのトップ画面と確定申告特集から、できることを拾うと次のとおりです。

  • 所得税の確定申告書を、画面の案内に沿って金額を入れて作る(必要な付表や明細書も自動で作られる)
  • 青色申告決算書・収支内訳書を新しく作る
  • 作った申告書をe-Taxで送信する(スマホとマイナンバーカードでの送信にも対応)
  • マイナポータルと連携して、一部の情報を自動で入力する
  • 医療費や寄附金の明細を集計用のファイルで入力し、読み込む
  • インボイス発行事業者の消費税の申告書を作る(2割特例の適用も含む)
  • 途中で保存したデータや前年のデータを読み込んで作り直す、提出後の誤りを直す更正の請求書・修正申告書を作る

2026年10月1日時点で開いているのは令和7年分の画面です。令和8年分(2027年2〜3月に出す分)は、年分が切り替わってから使えるようになります。

作成コーナーで足りる人

申告の中身足りる理由手元に要るもの
会社員の医療費控除・ふるさと納税源泉徴収票と控除の証明を入れるだけ源泉徴収票、明細や証明書
住宅ローン控除の1年目申告書と明細書が画面で作れる契約書類など控除の計算に使う書類
副業の雑所得(原稿料など)収入と経費の合計を入れれば足りる収入と経費の集計
年金を受け取っている人公的年金等の源泉徴収票から入力源泉徴収票
白色申告の事業所得収支内訳書を作れる帳簿の集計

会社員の場合、確定申告が要るかどうかは、給与の額や副業の所得の額で決まります。副業の所得が20万円以下の場合の扱いは副業の20万円の線で先に確かめてください。給与を2か所以上から受けている人や、給与の収入が2,000万円を超える人は、別の条件で判定します。

白色申告でも、事業所得・不動産所得・山林所得がある人は、売上や経費を帳簿に記録し、帳簿は7年、領収書などの書類は5年保存する決まりです。ただし白色申告の帳簿は、日々の合計をまとめて書くような簡易な方法でも認められています。表計算ソフトや手書きでつけた帳簿の合計を作成コーナーの収支内訳書に入れれば、申告は完結します。

作成コーナーだけでは足りない人

青色申告で55万円・65万円の控除を受けたい人

国税庁のタックスアンサー No.2072 によると、青色申告特別控除は条件によって3段階です。

控除額主な条件
65万円55万円の条件に加え、e-Taxで提出するか、優良な電子帳簿で保存
55万円正規の簿記(複式簿記)で記帳し、貸借対照表と損益計算書を添えて期限内に申告
10万円上の条件を満たさない青色申告者

作成コーナーで作れるのは、青色申告決算書(貸借対照表・損益計算書)と申告書です。55万円・65万円の前提になる複式簿記の帳簿(仕訳帳・総勘定元帳)は、申告の前に別に備えておく必要があります。65万円の条件のうち「e-Taxで提出」は作成コーナーからの送信で満たせますが、帳簿の部分は作成コーナーの外の話です。

複式簿記の帳簿を手でつけるのは、取引が少なければ不可能ではありませんが、1年分の仕訳を貸借対照表まで正しくつなげるのは手間がかかります。この部分を任せる道具が会計ソフトです。選び方は個人事業の会計ソフトの選び方で、青色申告の承認申請の期限は開業届と青色申告承認申請の記事で扱っています。

取引が多く、明細の入力を手で追いつけない人

作成コーナーは、1年分の集計を入れる前提の仕組みです。毎月数十件以上の売上や経費がある人は、銀行口座やカードの明細を取り込んで仕訳にする機能を持つソフトのほうが、集計の手間と入力の誤りを減らせます。

請求書の発行もまとめたい人

インボイス発行事業者が出す請求書(適格請求書)には、登録番号や税率ごとに区分した消費税額などを書く決まりがあります。作成コーナーで案内されている機能は申告書・決算書の作成と提出で、請求書づくりは含まれていません。請求書から売上の記帳までをつなげたい場合は、その機能を持つソフトを検討する理由になります。

市販ソフトを選ぶ前に確かめること

特定の製品の良し悪しではなく、次の点を自分の申告の中身と照らして見ます。料金は製品ごと・時期ごとに変わるため、申し込む前に提供元の料金表で、申告する年分に対応しているかも合わせて確かめてください。

  • e-Taxで送信できるか:65万円控除のためにe-Taxで出すなら、ソフトから直接送信できるか、作成コーナーに数字を移して送信するかを決めておきます。
  • 青色申告決算書まで作れるか:帳簿から決算書・申告書まで一続きで作れるかを確かめます。
  • 優良な電子帳簿の要件に対応しているか:e-Taxを使わずに65万円を受けるなら、この要件と届出が必要です。
  • 無料の範囲:無料で使える範囲と有料の範囲の境目を、提供元の案内で確かめます。

実行時の落とし穴

  • 期限を過ぎると55万円・65万円が消える:55万円・65万円の控除は、申告期限(令和8年分は2027年3月15日)までに出すことが条件です。還付の申告でも同じで、期限後は10万円になります。
  • 決算書を画像で送る:e-Taxで65万円を受けるときに、貸借対照表や損益計算書をイメージデータ(PDFや画像)で送ると要件を満たしません。データとして送信します。
  • 前年のデータの年分違い:前年のデータを読み込んだときは、控除の金額や線が令和8年分に改正されている点に注意します。基礎控除は合計所得金額489万円以下で104万円になりました。

よくある誤解

  • 「有料ソフトで作らないと青色申告の65万円は受けられない」:65万円の条件は、複式簿記の帳簿・決算書の添付・期限内・e-Tax送信(または優良な電子帳簿)です。道具の指定はありません。
  • 「作成コーナーはパソコンがないと使えない」:スマホとマイナンバーカードでのe-Tax送信が案内されています。ただし、決算書を伴う申告は入力量が多いため、画面の大きいパソコンのほうが確かめやすいのは事実です。
  • 「会社員はソフトが要らないが、副業をしたら必要」:副業の雑所得の申告は、収入と経費の合計を入れれば作成コーナーで作れます。ソフトが役に立つのは、事業として帳簿を複式でつける段階からです。

出典

(いずれも2026年10月1日に確認)