確定申告の義務がない人でも、一定の控除を申告することで、納めすぎた所得税が戻ってくることがあります。これを還付申告といい、対象になる控除は複数あります。この記事では、見落とされやすい控除を、根拠となる国税庁の制度にもとづいて整理します。

制度の目的と対象者

還付申告は、年末調整や毎月の給与から源泉徴収された所得税額が、実際に納めるべき税額より多かった場合に、その差額の返還を受けるための手続きです。会社員・年金受給者など、確定申告の義務がない人でも利用できます。

対象になる主な控除

国税庁タックスアンサーNo.2030では、給与所得者が還付申告できる例として、次のようなケースが挙げられています。

  • 年の途中で退職し、年末調整を受けずに源泉徴収税額が納め過ぎになっている場合
  • 一定の要件を満たしてマイホームを取得し、住宅ローンがある場合(住宅ローン控除の1年目)
  • マイホームについて特定の改修工事をした場合
  • 災害や盗難などで資産に損害を受けた場合(雑損控除)
  • 多額の医療費を支払った場合(医療費控除)
  • ふるさと納税など特定の寄附をした場合(寄附金控除)
  • 上場株式等の譲渡損失を、申告分離課税を選択した配当所得から差し引く場合

このうち、医療費控除・寄附金控除・雑損控除・住宅ローン控除の1年目は、年末調整では受けられず、確定申告でのみ適用を受けられる点が共通しています。また、年末調整の際に扶養親族の記載に漏れがあった場合など、年末調整の内容を後から訂正したいケースも、確定申告(還付申告)で対応することになります。

控除ごとの特徴

  • 医療費控除:本人や生計を一にする家族のために年間に支払った医療費が一定額を超える場合に受けられます。確定申告書に「医療費控除の明細書」を添付する必要があり、医療費の領収書は5年間保管しておく必要があります(国税庁「医療費控除を受ける方へ」)。
  • 寄附金控除(ふるさと納税など):ふるさと納税は「ワンストップ特例制度」を使えば確定申告が不要になりますが、医療費控除など他の理由で確定申告をする場合、ワンストップ特例の適用は無効になり、寄附金控除として改めて確定申告書に記入する必要があります。また、寄附先が6自治体以上になった場合もワンストップ特例は使えず、確定申告が必要です。
  • 住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)の1年目:2年目以降は年末調整で受けられますが、住宅を取得して初めて控除を受ける年は、必ず確定申告が必要です(国税庁「住宅ローン控除を受ける方へ」)。
  • 雑損控除:災害や盗難、横領などによって資産に損害を受けた場合に受けられる控除です。
  • 扶養控除等の記載漏れの訂正:年末調整の際に扶養親族の記載が漏れていた場合など、年末調整の内容そのものを訂正したいケースも、還付申告で対応できます。

申告できる期間は5年間

還付申告は、その年の翌年1月1日から5年間提出することができます(国税庁タックスアンサーNo.2030)。義務のある確定申告には毎年決まった申告期間(例年2月中旬から3月中旬)がありますが、還付申告にはその制約がなく、5年間のうちであればいつでも提出できます。過去の年分をまとめて申告したい場合は、年ごとに申告書を分けて作成する必要があります。

いくら戻るかの考え方

還付される金額の目安は、次のように把握できます。

還付額 ≒ 追加で認められる控除額 × 所得税の税率

所得税の税率は、合計所得金額に応じて段階的に上がる超過累進税率です(国税庁タックスアンサーNo.2260)。したがって、同じ控除額であっても、所得税の税率が高い人ほど戻ってくる金額は大きくなり、税率が低い人はその分小さくなります。正確な金額は、実際の所得金額や他の控除の状況によって変わるため、確定申告書等作成コーナーに入力して確認するのが確実です。国税庁タックスアンサーNo.2260の税率表では、合計所得金額に応じて5%から45%までの7段階の税率が定められており、所得が多い人ほど高い税率区分に当てはまります。同じ10万円の控除でも、税率5%の人であれば還付額はおおむね数千円程度、税率20%や30%の人であればより大きな金額になるという違いが生まれます。

また、所得税の確定申告書の内容は、税務署からお住まいの市区町村に連携され、翌年度の個人住民税の算定にも使われます。そのため、確定申告で控除を追加すると、所得税の還付に加えて、翌年度(例年6月から)の住民税が下がる効果も見込めます。

令和何年度の話をしているか

還付申告の対象となる控除の内容(医療費控除の対象となる医療費の範囲や、住宅ローン控除の控除率など)は年度によって変わることがあります。申告したい年分がいつなのかを確認し、その年分の国税庁の確定申告特集ページや、その年分のタックスアンサーの記載を確認してください。この記事で紹介した5年間の期間や税率の仕組み自体は、令和7年9月26日時点の国税庁の説明にもとづいています。

よくある誤解

  • 「還付申告にも3月15日の期限がある」: 義務のある確定申告とは異なり、還付申告には決まった申告期間の制約がなく、翌年1月1日から5年間提出できます。
  • 「控除額がそのまま戻ってくる」: 戻ってくるのは、控除額に所得税の税率を掛けた金額です。控除額と還付額は同じではありません。
  • 「所得税だけの話」: 確定申告の内容は住民税にも反映されるため、翌年度の住民税額にも影響します。

自分のケースでいくら戻るか、どの年分まで遡れるかといった個別の計算や判断は、最寄りの税務署または国税庁の電話相談センターに確認してください。そもそも確定申告の義務がある人・ない人の分け方は「確定申告が必要な人・しなくていい人」、e-Taxでの申告書の作り方は「e-Taxでの確定申告の手順」で説明しています。

出典

(いずれも2026年9月26日に確認)