副業を事業として届け出るときに出す書類は、主に「個人事業の開業・廃業等届出書(開業届)」と「所得税の青色申告承認申請書」の2つです。期限が厳しいのは青色申告のほうで、原則は青色申告にしたい年の3月15日まで、1月16日以後に開業した人は開業した日から2か月以内です。 これを逃すと、その年は最大65万円の青色申告特別控除を受けられません。開業届の提出期限は、国税庁の手続の案内では「事業の開始等の事実があった日の属する年分の確定申告期限まで」とされています。2つは同じ日にまとめて出すのがいちばん確実です。以下、出す前の確認から、提出、提出した後にすることまでを順に追います。
手順1:届け出の対象になる所得かを確かめる
開業届も青色申告も、対象は事業所得・不動産所得・山林所得を生ずる業務です。国税庁の No.2070 は、青色申告ができるのはこれらの所得がある人だと明記しています。副業の所得が業務に係る雑所得の人は、青色申告の対象になりません。
| 副業の形 | 所得の区分の例 | 青色申告 |
|---|---|---|
| 原稿料などを単発で受け取る | 雑所得 | 対象外 |
| 事業として継続して行う | 事業所得 | 対象 |
| 部屋や駐車場を貸す | 不動産所得 | 対象 |
国税庁の No.1500 は、副業の原稿料やシェアリングエコノミーの所得を雑所得の例に挙げています。自分の副業がどちらに当たるか迷うときは、所轄の税務署で確かめてから届出を出します。
手順2:開業届を書いて出す
期限と出し先
国税庁の手続の案内(A1-5)では、開業届の要点は次のとおりです。
- 期限:事業の開始等の事実があった日の属する年分の確定申告期限まで(土日・祝日なら翌日)
- 出し先:納税地の所轄税務署長
- 出し方:e-Tax、または書面を持参か送付。税務署が閉まっている日も、送付や時間外収受箱への投函で出せる
- 本人確認:書面でマイナンバーを書いて出すときは本人確認書類の提示か写しの添付。e-Taxなら不要
- 根拠:所得税法第229条
令和8年中に開業した人なら、令和8年分の確定申告期限である2027年3月15日が開業届の期限になります。ただし、後で見るように青色申告の申請は開業から2か月以内なので、実際には開業届もその時点で出しておくのが自然です。
税務署以外への届出
No.2090 は、個人で事業を始めたときに、税務署とは別に都道府県税事務所や年金事務所などへの届出が必要な場合があるとしています。事業税の届出の要否や期限は都道府県ごとに違うため、住んでいる都道府県の税事務所の案内で確かめます。
手順3:青色申告承認申請書を期限内に出す
提出期限は、いつ開業したかで分かれます。
| 開業した日 | 青色申告承認申請書の期限 | 青色になる年 |
|---|---|---|
| 1月1日〜1月15日 | その年の3月15日 | その年から |
| 1月16日以後 | 開業した日から2か月以内 | その年から |
| すでに事業をしている(白色からの切り替え) | 青色にしたい年の3月15日 | その年から |
例えば令和8年10月1日に開業した人は、12月1日が2か月の目安になります。日付の数え方に不安があれば、早めに出すに越したことはありません。
期限を過ぎてしまった場合、その年は白色申告になります。翌年から青色申告にするには、翌年の3月15日までに申請書を出します。
手順4:あわせて出すか検討する届出
No.2090 が挙げている、開業と同じころに必要になりやすい届出です。
| 届出 | 期限 | 必要になる人 |
|---|---|---|
| 青色事業専従者給与に関する届出書 | 3月15日まで(1月16日以後の開業なら2か月以内) | 家族に給与を払う青色申告者 |
| 給与支払事務所等の開設届出書 | 開設から1か月以内 | 人を雇って給与を払う人 |
| 適格請求書発行事業者の登録申請書 | 免税事業者は提出日から15日以降の登録希望日を書いて出す | インボイスを発行する人 |
インボイスの登録は、取引先との関係で決めるもので、開業と同時に必須というわけではありません。考え方はインボイス制度は副業にも関係するかで整理しています。
受けられる控除と特典
青色申告の承認を受けると、次の特典が使えます(No.2070、No.2072)。
- 青色申告特別控除:65万円、55万円、10万円の3段階
- 青色事業専従者給与:生計を一にする家族への給与を、届け出た範囲で経費にできる
- 純損失の繰越しと繰戻し:赤字を翌年以後3年間に繰り越せる
控除の段ごとの条件は次のとおりです。
| 控除額 | 条件 |
|---|---|
| 65万円 | 55万円の条件+e-Taxで申告、または優良な電子帳簿で保存(届出が必要) |
| 55万円 | 正規の簿記(複式簿記)で記帳、貸借対照表と損益計算書を添付、期限内に申告 |
| 10万円 | 上記に当たらない青色申告者(簡易な帳簿でよい) |
令和8年分の確定申告期限は2027年3月15日です。55万円・65万円は、期限を1日でも過ぎると、還付申告であっても受けられません。e-Taxで送るときに決算書をイメージデータ(PDFなど)で送る方法も、65万円の要件を満たしません。
所得税の税率は5%から45%の7段階で、課税所得195万円未満なら5%、195万円以上330万円未満なら10%です。65万円の控除が所得税をどれだけ減らすかは、自分の税率で変わります。青色申告特別控除は所得から差し引かれるため、住民税の計算にも効果が及びます。
帳簿と保存の準備
青色申告の帳簿は原則7年、請求書・見積書・納品書などの書類は5年保存します。55万円・65万円を狙うなら複式簿記の帳簿が必要になり、会計ソフトを使う人が多くなります。選び方は個人事業の会計ソフトの選び方で扱っています。家賃や通信費を按分する考え方は副業の経費の範囲の記事にまとめています。
実行時の落とし穴
- 開業届だけ出して青色申告承認申請書を出し忘れる:開業届を出しても青色申告にはなりません。2枚をそろえて出します。
- 開業日を実態と違う日にする:開業日は、青色申告の2か月の期限の起点になります。事業を始めた実際の日を書きます。
- 65万円を狙ったのに期限を過ぎる:55万円・65万円は期限内の申告が条件です。
- 家族に給与を払ってから届出を出す:青色事業専従者給与は、届け出た範囲でしか経費にできません。
よくある誤解
- 「開業届は開業から1か月以内に出す決まり」:国税庁の現在の手続の案内では、期限は開業した年分の確定申告期限までです。古い情報と混同しないようにします。
- 「開業届を出せば自動的に青色申告になる」:青色申告には承認申請書が別に必要です。
- 「青色申告なら誰でも65万円」:65万円は複式簿記、期限内の申告、e-Taxか優良な電子帳簿のすべてがそろったときだけです。簡易な帳簿なら10万円です。
- 「副業の雑所得でも青色申告できる」:青色申告の対象は、事業所得・不動産所得・山林所得のある人です。
出典
- 国税庁「A1-5 個人事業の開業届出・廃業届出等手続」
- 国税庁「No.2090 新たに個人で事業を始めたときの届出など」
- 国税庁「No.2070 青色申告制度」
- 国税庁「No.2072 青色申告特別控除」
- 国税庁「No.1500 雑所得」
- 国税庁「No.2260 所得税の税率」
- 国税庁「No.2020 確定申告」
- 国税庁「No.1191 配偶者控除」
(いずれも2026年10月1日に確認)