医療費控除の対象になるのは、本人またはその年に生計を一にしていた配偶者・親族のために、実際に支払った「治療」のための医療費です。予防や美容、健康の維持・増進を目的とした支出は対象になりません。医療費控除は見落とされやすい還付の控除の代表例でもあり、国税庁タックスアンサーNo.1120・No.1122の区分にもとづいて、迷いやすい項目を整理しました。

対象になるもの・ならないもの

国税庁タックスアンサーNo.1122「医療費控除の対象となる医療費」では、次のような整理がされています。

区分対象になる主な例対象にならない主な例
診察・治療医師・歯科医師による診療、治療のための入院費用美容目的の整形、疲労回復目的の施術
医薬品治療に必要な医薬品の購入費(風邪薬など)ビタミン剤など健康増進・予防目的の医薬品
通院・入院公共交通機関を使った通院費、入院中の部屋代・食事代自家用車のガソリン代・駐車料金、原則タクシー代
検査治療につながった人間ドック・健康診断の費用異常が見つからなかった健康診断・人間ドックの費用
施術あん摩・はり・きゅうなどの施術費(治療目的)疲労回復・体調を整える目的の施術
器具義手・義足・補聴器などの購入費-

通院の交通費は、電車やバスなど公共交通機関が利用できない場合を除き、タクシー代は対象になりません。自家用車で通院したときのガソリン代や駐車料金も対象外です。この点は本記事のもう一つのFAQでもある「何が対象か」の判断で誤りやすいところなので、領収書と一緒に通院日・交通手段をメモしておくと、申告時に迷いません。

人間ドックや健康診断の費用は、結果として重大な疾病が発見され、引き続きその疾病の治療をした場合に限り、診断のための費用も含めて医療費控除の対象になります。異常が見つからなかった場合は対象になりません。

歯の治療も迷いやすい項目です。国税庁タックスアンサーNo.1128によると、金やポーセレンなど一般的に使われている歯科材料による治療は対象になります。子どもの歯列矯正のように、発育段階にある子どもの不正咬合を治療するために必要と認められる場合の費用も対象ですが、容貌を美化するための歯列矯正は対象になりません。歯科ローンを利用した場合は、ローン契約が成立した年に治療費の全額を医療費控除の対象にできますが、ローンの金利や手数料にあたる部分は対象外です。通院に付き添いが必要な小さな子どもの場合、付添人の交通費も対象に含められます。

家族の医療費を合算できる範囲

国税庁タックスアンサーNo.1120では、医療費控除の対象を「自己又は自己と生計を一にする配偶者やその他の親族のために支払った医療費」としています。「生計を一にする」とは、同じ財布で暮らしていることを指し、同居は条件ではありません。進学で別居している子どもや、仕送りをしている親の医療費も、生計を一にしていれば合算の対象になります。

逆に、同居していても共働きで家計が別々であったり、扶養の関係にない場合は、合算できるかどうかを個別に判断する必要があります。迷う場合は税務署や国税庁の電話相談センターで確認してください。

なお、入院時の部屋代・食事代は医療費控除の対象になりますが、高額療養費制度(医療保険からの給付)では対象外とされています。同じ「入院の費用」でも、税の制度と医療保険の制度とで対象範囲が異なる点に注意してください。ただし、治療上の必要性がなく、本人や家族の希望だけで個室を選んだ場合の差額ベッド代は、医療費控除でも対象になりません。医師の指示や、感染症対策で個室しか空いていなかったなど、治療上やむを得ない事情がある場合は対象になり得ます。入院の際は、個室を希望する理由が「静かに過ごしたい」といった快適性にとどまるのか、医療機関側の都合や治療上の必要性によるものなのかを、領収書や説明資料とあわせて記録しておくと、申告時に迷いません。判断に迷う場合は、医療機関の窓口や税務署に確認してから申告することをお勧めします。

控除額の計算式

医療費控除の額は、次の式で計算します。

医療費控除額 =(実際に支払った医療費の合計額 − 保険金等で補てんされる金額)− 10万円(※)

※その年の総所得金額等が200万円未満の人は、10万円ではなく「総所得金額等の5%」が基準になります。例えば総所得金額等が150万円の人は、150万円×5%=7万5千円を超えた部分が対象です。医療費控除額の上限は200万円です。

保険金等で補てんされる金額には、生命保険の入院給付金や、健康保険から支給される高額療養費・出産育児一時金などが含まれます。補てんされる金額は、その給付の目的となった医療費の金額を限度として差し引くため、他の医療費からマイナスする必要はありません。

申告の仕方

医療費控除を受けるには、確定申告書に「医療費控除の明細書」を添付します。なお、市販薬の購入費が中心で医療費の合計が10万円に届かない人は、セルフメディケーション税制のほうが使える場合があります。通常の医療費控除とは基準額も対象になる費用も異なり、どちらか一方しか選べません。

出典

(いずれも2026年10月1日に確認)