高額療養費制度は、医療機関や薬局の窓口で支払った額が、ひと月(月の初めから終わりまでの暦月)で上限額を超えた場合に、その超えた金額を支給する制度です。上限額は年齢と所得水準によって分かれており、令和8年8月からは制度の持続可能性を確保する観点で上限額が段階的に見直され、新たに「年間上限」が設けられました。

69歳以下の自己負担限度額(令和8年8月以降)

厚生労働省の見直し内容にもとづき、滋賀県・福岡市が公表している資料では、69歳以下の自己負担限度額は次のとおりです。

所得区分(年収の目安)ひと月の上限額多数回該当新設の年間上限
901万円超270,300円+(医療費−901,000円)×1%140,100円168万円
600万円超〜901万円以下179,100円+(医療費−597,000円)×1%93,000円111万円
210万円超〜600万円以下85,800円+(医療費−286,000円)×1%44,400円53万円
210万円以下61,500円44,400円53万円
住民税非課税世帯36,900円24,600円29万円

(滋賀県・福岡市の案内にもとづく。年間上限は毎年8月から翌年7月までの1年間で計算します。)

「多数回該当」とは、過去12か月以内に3回以上上限額に達した場合、4回目から上限額がさらに下がる仕組みです。新設の「年間上限」は、長期にわたり治療を続ける人や低所得の人への配慮として、1年間(8月〜翌年7月)の自己負担の合計がこの金額を超えたときに、超えた分が払い戻される仕組みです。

70歳以上の人には、外来だけの上限額も別に設けられています。自分の正確な区分は、加入している医療保険(協会けんぽ・健保組合・市区町村国保など)に確認してください。所得区分は標準報酬月額や課税所得にもとづいて決まり、制度改正の詳細は加入先からも案内されます。

例えば、210万円超〜600万円以下の区分(69歳以下)に当たる人が、1か月の医療費(10割分)として100万円かかった場合の上限額は、「85,800円+(100万円-286,000円)×1%=92,940円」になります。窓口での自己負担(3割負担なら30万円)のうち、この上限額を超えた分(30万円-92,940円=207,060円)が高額療養費として払い戻されます。実際の区分は年収ではなく標準報酬月額や課税所得で決まるため、目安として利用してください。治療が長引いて多数回該当になれば、この上限額はさらに44,400円まで下がり、長期の治療ほど自己負担が抑えられる仕組みになっています。

世帯合算の仕組み

1回分の窓口負担では上限額を超えない場合でも、同じ月に複数回受診したり、同じ医療保険に加入している家族が受診した場合、窓口でそれぞれ支払った自己負担額を1か月単位で合算できます。合算額が上限額を超えたときは、超えた分が高額療養費として支給されます。ただし69歳以下の人の受診については、1つの医療機関等での自己負担額が2万1千円以上であることが合算の条件です。

申請の仕方

高額療養費の支給を受けるには、加入している公的医療保険(協会けんぽの都道府県支部・健康保険組合・市区町村の国民健康保険・後期高齢者医療制度・共済組合など)に、支給申請書を提出または郵送します。病院などの領収書の添付を求められる場合もあります。加入する医療保険によっては、対象になる人へ申請を勧めたり、自動的に振り込んでくれるところもあります。

窓口での立て替えを避けたい場合は、事前に「限度額適用認定証」の交付を受けて提示するか、マイナ保険証でオンライン資格確認に対応した医療機関を受診すれば、窓口での支払いそのものを上限額までに抑えられます。

申請には時効があります。 堺市の案内によると、高額療養費の請求権は、診療を受けた月の翌月1日から2年で時効になり、それを過ぎると申請できなくなります。過去の入院や手術で上限額を超えていたのに申請していない心当たりがある場合は、早めに加入している医療保険に確認してください。

医療費控除との違い

高額療養費は加入している医療保険から支給される給付で、税金の制度ではありません。一方、医療費控除は確定申告で税負担を軽くする制度です。高額療養費として支給された金額は、医療費控除の計算で「保険金等で補てんされる金額」として差し引く必要があります。対象になる費用の範囲や計算式は医療費控除の対象になるもの・ならないもので整理しています。

出典

(いずれも2026年10月1日に確認)