会社員の多くは、勤務先の年末調整で1年分の所得税の精算が完了するため、確定申告をしなくても済みます。ただし、一定の条件に当てはまる人には確定申告の義務があり、義務がなくても申告をすると税金が戻ってくる還付申告の対象になる人もいます。この記事では、令和7年分(2026年に提出する分)を基準に、国税庁の区分にもとづいて両者を分けて整理します。
確定申告の義務がある人(令和7年分)
国税庁タックスアンサー「No.1900 給与所得者で確定申告が必要な人」では、給与所得者のうち次のいずれかに当てはまる人は確定申告が必要とされています。
- その年の給与の収入金額が2,000万円を超える人
- 給与を1か所から受けており、給与所得・退職所得を除く各種所得金額の合計が20万円を超える人(副業の所得などが該当します)
- 給与を2か所以上から受けており、年末調整されなかった給与の収入金額と、給与所得・退職所得を除く各種所得金額との合計が20万円を超える人
- 同族会社の役員などで、その会社から給与のほかに貸付金の利子や資産の賃貸料などを受け取っている人
- 災害減免法により源泉徴収の猶予などを受けている人
- 源泉徴収義務のない者から給与等の支払を受けている人
- 退職所得について、正規の方法で計算した税額が源泉徴収された税額と異なる人
一方で同じNo.1900には例外規定があり、給与の収入金額から雑損控除・医療費控除・寄附金控除・基礎控除を除く所得控除の合計額を差し引いた金額が150万円以下、かつ給与・退職所得を除く各種所得金額の合計が20万円以下であれば、申告は不要とされています。
なお、「所得金額の合計」には、源泉分離課税となる上場株式の配当や特定口座(源泉徴収あり)内の譲渡益などは含まれません。自分がどの区分に当たるか迷う場合は、最寄りの税務署に確認してください。
申告の期間と提出先
確定申告の義務がある人は、原則として決められた申告期間内に、住所地を管轄する税務署へ申告書を提出する必要があります。令和7年分の所得税及び復興特別所得税の申告・納付期限は、2026年3月16日(月)です(申告相談・受付期間は2026年2月16日から3月16日まで)。提出方法は、税務署の窓口への持参・郵送のほか、国税庁の「確定申告書等作成コーナー」を使ってe-Taxで送信する方法があります。
還付申告の場合は、この申告期間より前でも、その年の翌年1月1日から提出することができます(例:令和7年分は2026年1月1日から提出可能)。義務のある申告と違って締め切りに追われるものではありませんが、書類を揃えたタイミングで早めに提出すると手続きがスムーズです。
「20万円以下は申告不要」は所得税だけのルールです
副業の所得が20万円以下なら申告しなくてよい、という話は所得税の確定申告に限った取り扱いです。個人住民税にはこの20万円のルールがありません。名古屋市の案内では、市民税・県民税には所得税のような申告の省略範囲はなく、原則としてすべての所得を申告する必要があるとされています。そのため、所得税の確定申告をしないと決めた場合は、給与以外の所得についてお住まいの市区町村へ住民税の申告が別途必要になることがあります。所得税の確定申告をした場合は、その内容が税務署から市区町村へ連携されるため、住民税の申告を重ねて行う必要はありません。
義務はなくても、した方が得な場合(還付申告)
確定申告の義務がなくても、次のような控除を受けたい場合は確定申告(還付申告)をすることで税金が戻ってくる可能性があります。
- 医療費控除:本人や生計を一にする家族のために支払った医療費が一定額を超える場合
- 寄附金控除:ふるさと納税などについて、ワンストップ特例を利用していない場合や、寄附先が6自治体以上になりワンストップ特例の対象外になった場合
- 住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)の1年目:2年目以降は年末調整で受けられますが、1年目は必ず確定申告が必要です
- 雑損控除:災害や盗難などで資産に損害を受けた場合
これらは年末調整の対象外の控除であり、国税庁の各特集ページでも、確定申告書に必要書類(医療費控除の明細書など)を添付して申告する必要があると案内されています。還付申告は、その年の翌年1月1日から5年間提出できます(国税庁タックスアンサーNo.2030)。義務のある申告とは提出できる期間が異なる点に注意してください。
年末調整で済む控除と、申告でしか受けられない控除
| 区分 | 主な控除 |
|---|---|
| 年末調整で完結できる | 扶養控除、配偶者控除等、基礎控除、生命保険料控除、地震保険料控除、社会保険料控除、住宅ローン控除(2年目以降)など |
| 確定申告が必要 | 医療費控除、寄附金控除(ワンストップ特例を使わない場合)、雑損控除、住宅ローン控除の1年目 |
よくある誤解
- 「年末調整をしていれば絶対に確定申告はいらない」: 医療費控除や寄附金控除など、年末調整の対象外の控除を受けたい場合は、年末調整をしていても確定申告が必要です。
- 「副業が20万円以下だから何もしなくていい」: 所得税の申告は不要でも、住民税の申告が別途必要になる場合があります。お住まいの市区町村の窓口に確認してください。
- 「義務がある申告と還付申告は同じ期限」: 義務のある確定申告には毎年決まった申告期間がありますが、還付申告は翌年1月1日から5年間提出できるなど、扱いが異なります。
自分がどちらに当たるか、あるいは申告した方が得かどうかの個別の判断は、最寄りの税務署または国税庁の電話相談センターに確認してください。
出典
- 国税庁タックスアンサー No.1900「給与所得者で確定申告が必要な人」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1900.htm
- 国税庁「確定申告が必要な人」(令和7年分確定申告の手引き) https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/tebiki/2025/01/1_06.htm
- 国税庁タックスアンサー No.2030「還付申告」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2030.htm
- 国税庁「医療費控除を受ける方へ」(令和7年分確定申告特集) https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/tokushu/keisubetsu/iryou-koujo.htm
- 国税庁「住宅ローン控除を受ける方へ」(令和7年分確定申告特集) https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/tokushu/keisubetsu/juutaku.htm
- 名古屋市「給与所得者で副収入がある場合、市民税・県民税の申告は?」 https://www.city.nagoya.jp/kurashi/zeikin/1035069/1012012/1012022/1033974/1012026.html
(いずれも2026年9月26日に確認)