副業の経費になるのは、国税庁の説明では「収入を得るために直接要した費用」と「業務上の費用」です。私用と混ざる自宅の家賃・電気代・通信費は、業務に直接必要だったことを記録で区分できる部分だけが経費になります。 「全部経費にできる」「何割までなら大丈夫」という決まった割合はありません。作業に使う部屋の面積、業務に使った時間、通信の利用記録など、自分で説明できる根拠を作り、その根拠を残しておくことがすべての前提です。10万円以上のパソコンなどは買った年に全額を経費にできず、数年に分けて経費にします。領収書や請求書は、事業所得なら原則5年の保存が必要です。個別の費用が経費になるか迷うときは、所轄の税務署に確かめてください。

経費になるものの2つの条件

国税庁のタックスアンサー No.2210 は、事業所得・不動産所得・雑所得の計算で必要経費にできる金額を、次の2つとしています。

  1. 売上原価など、その収入を得るために直接要した費用
  2. その年に生じた販売費、一般管理費その他の業務上の費用

経費にする年は、支払った年ではなく「その年に債務が確定した」年です。12月31日までに債務が成立し、給付の原因となる事実が起き、金額が合理的に計算できる、という3つがそろっていれば、その年の経費になります。12月に仕事で使った通信費を翌年1月に払った場合でも、その年の経費として数えるのが原則です。

副業の所得が前々年の収入300万円以下の業務に係る雑所得なら、申告書に書くことで、実際に収入した金額と支払った金額で計算する「現金主義」の特例も選べます。

副業で出てきやすい費用と、その扱い

費用経費になる部分残しておく記録
家賃(自宅で作業)作業に使う部分間取りと作業スペースの面積
電気代・インターネット代業務に使った部分使用時間の記録、按分の計算
スマホ代業務の通話・通信の部分利用明細、業務用に使った割合の根拠
書籍・講座・ソフトの利用料副業の業務に使うもの領収書と、何の業務に使ったか
交通費打ち合わせや取材の移動日付・行き先・目的
パソコン・カメラ業務に使う割合購入の領収書と取得日

どの費用も、支払ったことだけでなく「副業の業務のために使った」ことを後から説明できるかどうかが分かれ目です。

家事按分の考え方

私用と業務の両方にかかわる費用を、国税庁は「家事関連費」と呼んでいます。例として挙げられているのは店舗併用住宅の租税公課・家賃・水道光熱費で、そのうち経費になるのは、取引の記録などに基づいて業務の遂行上直接必要であったことが明らかに区分できる金額に限られます。

割合の根拠として使いやすいのは、次のような数字です。

  • 面積:自宅のうち作業に使う部屋の広さ ÷ 住まい全体の広さ
  • 時間:1か月のうち業務に使った時間 ÷ 使った時間の合計
  • 利用記録:通話や通信の明細のうち業務に使った分

計算のしかたを数字で示すと、家賃が月8万円、住まい全体が40平方メートルで、作業専用に使う部屋が8平方メートルなら、面積の割合は2割で、月1万6千円が按分の候補になります。その部屋を私用にも使っているなら、そこからさらに使用時間で割り引くのが筋です。割合を決めたら、計算の式と根拠を1枚のメモにして、帳簿や領収書と一緒に保存しておきます。年ごとに働き方が変われば、割合も見直します。

経費にならないもの

No.2210 は、経費にならないものの例も挙げています。

  • 生計を一にする配偶者や親族に払う家賃や給与(青色事業専従者給与を除く)
  • 所得税や住民税
  • 罰金、科料、過料

反対に、業務のための借入金の利息や、業務用資産の修繕費は経費になります。固定資産税は業務用の部分に限って経費になります。家族に払った分が経費にならないのは、「家族に払えば世帯の中でお金が回るだけ」だからで、受け取った家族の側も所得として扱いません。

10万円以上の機材は、年をまたいで経費にする

パソコンやカメラのように長く使うものは、減価償却資産として扱います。国税庁の No.2100 による扱いは次のとおりです。

取得価額扱い対象
10万円未満使い始めた年に全額を経費すべての人
10万円以上20万円未満3年間で3分の1ずつ経費にもできるすべての人
10万円以上40万円未満年合計300万円まで、使い始めた年に全額を経費にできる特例一定の要件を満たす青色申告者

青色申告者の特例は、令和8年3月31日までに取得した資産は30万円未満が対象で、令和8年4月1日以後に取得した資産から40万円未満に広がりました。期限は令和11年3月31日までの取得です。これらに当たらないものは、法定の耐用年数に沿って数年に分けて経費にします。業務と私用の両方に使う機材は、減価償却費にも按分の考え方が当てはまります。

記録の残し方と保存期間

国税庁の「個人で事業を行っている方の記帳・帳簿等の保存について」では、事業所得がある人の保存期間を次のように案内しています。

  • 収入や経費を書いた帳簿(法定帳簿):7年
  • 任意に作った帳簿:5年
  • 領収書・請求書などの書類:5年

白色申告でも記帳の義務があり、日々の合計をまとめて書くような簡易な方法も認められています。業務に係る雑所得の人は、前々年の収入が300万円を超えると、請求書や領収書などの書類(現金預金取引等関係書類)の保存が必要になります。300万円以下の人も、経費を申告する以上は、根拠を示せるように残しておくのが安全です。

記録を続けるこつは、事業用の支払いを1つの口座とカードにまとめることです。按分が必要な費用だけを別にメモすれば、年末の集計が短く済みます。帳簿を会計ソフトでつけるかどうかは個人事業の会計ソフトの選び方で扱っています。

実行時の落とし穴

  • 割合の根拠を作らずに毎年同じ数字を使う:引っ越しや働き方の変化で、面積や時間の割合は変わります。根拠のメモも毎年作り直します。
  • 経費を増やして20万円の線の下に収める:確定申告が要るかどうかの20万円は所得(収入から経費を引いた額)で判定します。経費は実際にかかったものだけを入れます。線の考え方は副業の20万円の線の記事で確かめてください。
  • 赤字の申告と住民税:副業の所得を赤字で申告すると、住民税の徴収方法で「自分で納付」を選んでも特別徴収になる自治体があります。仕組みは副業が住民税で勤務先に分かる仕組みで説明しています。
  • 10万円以上の機材を一度に経費にする:青色申告者の特例に当たらなければ、耐用年数に沿って分けて経費にします。

よくある誤解

  • 「副業に関係ありそうなものは何でも経費」:業務のために直接必要だったと説明できるものだけです。私用と混ざる費用は按分が前提です。
  • 「家事按分は5割までなら認められる」:国税庁の説明に、決まった上限の割合はありません。記録に基づいて区分できる部分が経費になります。
  • 「雑所得の赤字は給与の税金を減らせる」:雑所得の損失は、ほかの所得と損益通算できません。
  • 「レシートがあれば帳簿は要らない」:事業所得がある人には、白色申告でも記帳の義務があります。

出典

(いずれも2026年10月1日に確認)