会社員の住民税は、勤務先が毎月の給与から差し引いて納める「特別徴収」が原則です。副業で所得があると、その分も合算した住民税額が勤務先に通知され、給与から引かれます。 これが「住民税で副業が分かる」と言われる仕組みです。事業所得や雑所得のように給与以外の所得の分は、申告書の徴収方法の欄で「自分で納付」を選ぶと、自宅に届く納付書で払う「普通徴収」にできます。ただし、アルバイトやパートなど給与として受け取る副業の分は、地方税法の定めから普通徴収にできないとする自治体が増えていて、中野区や富士市は令和8年度(令和7年中の所得に対する住民税)から扱いを改めました。税の手続きとは別に、勤務先の就業規則の確認も欠かせません。
住民税が勤務先を通る仕組み
住民税は、前の年の所得をもとに市区町村が計算し、翌年度に納めます。会社員の場合、流れは次のとおりです。
- 勤務先が、1月に給与支払報告書を市区町村へ出す
- 本人が副業の所得を確定申告書か住民税の申告書で申告する
- 市区町村が、給与と副業を合わせて住民税額を決める
- 勤務先に「特別徴収税額の決定通知書」が届き、6月から翌年5月までの給与から差し引かれる
中野区の案内では、勤務先に送る「特別徴収義務者用」の通知書には給与から差し引く税額だけが書かれ、所得の種類や金額、控除の内訳は書かれていません。内訳は本人用の通知書に書かれ、勤務先には見えない形で送られます。それでも、副業の分まで特別徴収にすれば、勤務先が差し引く税額はその分だけ大きくなります。
所得の種類で、選べるかどうかが決まる
普通徴収を選べるかは、副業の所得の種類で分かれます。
| 副業の所得の種類 | 自分で納付を選んだとき | 根拠 |
|---|---|---|
| 事業所得・雑所得・不動産所得など | その分は普通徴収 | 地方税法第321条の3第2項 |
| 2か所目以降の給与(アルバイト等) | 特別徴収のまま(自治体により例外) | 地方税法第321条の3第1項 |
| 65歳以上の公的年金 | 年金からの特別徴収か普通徴収 | 選んでも変わらない |
中野区と富士市は、地方税法第321条の3第1項が給与所得に係る住民税を特別徴収で徴収すると定め、第2項で普通徴収を希望できるのは給与所得以外の所得に係る分に限られていることを、扱いを改めた理由に挙げています。富士市は、令和6年分の確定申告から、給与所得だけの場合は申告書の「自分で納付」を選べなくなったとも案内しています。門真市も、給与と公的年金については「自分で納付」を選んでも普通徴収にはできないとしています。
一方で、茨木市のように、複数の勤務先から給与を受ける人が「自分で納付」を選んだ場合に、主たる給与の分だけを特別徴収にし、ほかの給与で増えた分を普通徴収にする扱いを案内している自治体もあります。給与の副業の扱いは住んでいる市区町村で違うので、申告の前に市区町村の住民税の担当課に確かめるのが確実です。
申告書のどこで選ぶか
所得税の確定申告をする人
確定申告書の第二表に「住民税・事業税に関する事項」の欄があり、その中の「給与・公的年金等以外の所得に係る住民税の徴収方法」で「特別徴収」か「自分で納付」を選びます。何も選ばない場合は、原則として特別徴収になります。門真市や茨木市も、給与・公的年金以外の所得を普通徴収にしたいときは必ず「自分で納付」を選ぶよう案内しています。
令和8年分の確定申告の期間は、2027年2月16日から3月15日までです。副業の所得が給与以外で20万円を超える人などは、所得税の確定申告が必要です。要否の線は副業の20万円の線の記事で確かめてください。
所得税の確定申告をしない人
給与以外の所得が20万円以下で所得税の確定申告が要らない人も、住民税の申告は別に必要です。大津市は、給与所得以外の所得が20万円以下の人は所得税の確定申告は不要でも市民税・県民税の申告は必要だと案内しています。小平市も、住民税には源泉徴収のような仕組みがなく、給与以外の所得がある場合は所得の多少にかかわらず申告が必要だと説明しています。住民税の申告書にも徴収方法を選ぶ欄があります。
自分で納付を選んでも特別徴収になる場合
中野区は、「自分で納付」を選んでも、普通徴収にする税額が生じないために全額が特別徴収になる例を挙げています。
- 申告した副業の所得がマイナス(赤字)の場合
- 追加で申告した控除のほうが、副業の所得より大きい場合
- ふるさと納税などの税額控除のほうが、副業の所得で増える住民税より大きい場合
副業の経費が多くて赤字の年や、同じ申告でふるさと納税や扶養の追加をまとめて申告する年は、通知の税額の動きが大きくなることがあります。経費の考え方は副業の経費の範囲の記事で扱っています。
税の手続きより先に、就業規則を読む
住民税の徴収方法は、あくまで税の納め方の選択です。副業をしてよいかどうかは、勤務先の就業規則と労働契約で決まります。
厚生労働省は「副業・兼業の促進に関するガイドライン」を公開し、モデル就業規則からは「許可なく他の会社等の業務に従事しないこと」という規定を削って、副業・兼業についての規定を新しく設けました。ただし、実際の就業規則は会社ごとに違います。届出や許可が要るかを、自分の勤務先の規則で確かめてください。
アルバイトなど雇われて働く副業の場合は、本業と副業の労働時間を通算する考え方があり、厚生労働省はそのための解説資料も出しています。雇われる副業は、税の手続きとは別に、労働時間の面でも勤務先とのやり取りが生じうる、と考えておくほうが実態に合います。
実行時の落とし穴
- 第二表の欄を空けたまま出す:何も選ばないと原則として特別徴収です。提出前に第二表の住民税の欄を見直します。
- 申告の後で選び直そうとする:徴収方法は申告のときに伝えるものです。出した後に変えたいときは、早めに市区町村の担当課に相談します。
- 給与の副業を事業所得や雑所得として書く:雇用契約で受け取る給与は、源泉徴収票のとおり給与所得として申告します。所得の区分を変えて普通徴収にしようとするのは、申告の誤りになります。
- 引っ越しの年の確認漏れ:住民税の申告先は、その年度の1月1日に住んでいた市区町村です(大津市の案内でも、1月2日以降に転出した人を含めて申告の対象としています)。扱いを確かめる先も、その市区町村です。
よくある誤解
- 「普通徴収にすれば勤務先には絶対に分からない」:普通徴収は、給与以外の所得の分を給与から引かない、という納め方の選択にすぎません。雇われる副業や就業規則上の届出など、税以外の経路もあります。
- 「20万円以下なら申告しなくてよい」:20万円以下で申告が要らないのは所得税の話です。住民税の申告は別に必要とされています。
- 「どの自治体でも給与の副業は普通徴収にできる」:令和8年度から全額特別徴収にした自治体があり、扱いは市区町村で違います。
副業の規模が大きくなり、事業として届け出るかどうかを考え始めたら、開業届と青色申告承認申請の記事で手続きの順番を確かめてください。
出典
- 中野区「給与や所得が複数ある場合の住民税の徴収方法について」
- 富士市「給与や所得が複数ある場合の住民税の徴収方法について」
- 門真市「確定申告書作成の際の住民税に関する注意点」
- 茨木市「確定申告書作成の際の住民税に関する注意点」
- 大津市「個人市民税・県民税 申告をしなければならない方について」
- 小平市「給与所得以外の所得についての住民税の申告は必要ですか」
- 国税庁「No.1900 給与所得者で確定申告が必要な人」
- 国税庁「No.2020 確定申告」
- 厚生労働省「副業・兼業」
(いずれも2026年10月1日に確認)