ふるさと納税の上限額は、「住民税の特例分の控除が、住民税所得割額の2割に収まる寄附額」のことです(総務省「税金の控除について」)。つまり、上限を知るのに必要な数字は、自分の住民税の所得割額と所得税の税率の2つです。どちらも、前年の住民税決定通知書と源泉徴収票から読み取れます。
この記事では、総務省が公表している計算式から上限を逆算する手順と、年収・家族構成・ほかの控除で上限が変わる理由を整理します。ポータルサイトのシミュレーターは便利ですが、入力しなかった控除は反映されないため、目安として使い、最後は自分の数字で確かめるのが安全です。
制度の目的と上限がある理由
ふるさと納税は、自治体への寄附のうち2,000円を超える部分が、所得税と住民税から原則として全額控除される制度です(総務省「ふるさと納税の概要」)。ただし全額が戻るのには「一定の上限」があり、その上限を決めているのが住民税の特例分の控除です。
金額の決まり方
総務省「税金の控除について」は、控除を次の3つに分けて説明しています。
| 控除 | 計算式 | 限度 |
|---|---|---|
| ①所得税 | (寄附額−2,000円)×所得税の税率 | 寄附額は総所得金額等の40%まで |
| ②住民税・基本分 | (寄附額−2,000円)×10% | 寄附額は総所得金額等の30%まで |
| ③住民税・特例分 | (寄附額−2,000円)×(100%−10%−所得税の税率) | 住民税所得割額の2割まで |
※総務省「ふるさと納税のしくみ|税金の控除について」(2026年9月24日確認)。所得税の税率には、令和19年中の寄附までは復興特別所得税の税率が加わります。
①〜③を足すと「寄附額−2,000円」になります。③が所得割額の2割を超えた場合、③は「所得割額×20%」で止まり、総務省の説明どおり実質の負担が2,000円を超えます。
上限を逆算する式
③が所得割額の2割とちょうど等しくなる寄附額が上限です。③の式を変形すると、次のようになります。
上限の寄附額 = 住民税所得割額 × 20% ÷(90% − 所得税の税率)+ 2,000円
ここでの「所得税の税率」は、2026年中の寄附なら、所得税の税率に復興特別所得税(基準所得税額の2.1%)を加えた率、つまり税率×1.021で計算します(国税庁「No.2260 所得税の税率」)。
計算してみる(数字は説明のための仮定です)
前年の住民税決定通知書で、所得割額(市民税と県民税の合計)が30万円、所得税の税率が10%の人の場合:
- 所得割額の2割:30万円×20%=6万円
- 所得税の税率(復興特別所得税を含む):10%×1.021=10.21%
- 90%−10.21%=79.79%
- 6万円÷79.79%=約75,197円
- 2,000円を足すと、上限は約77,000円
この人が7万7千円より多く寄附すると、超えた分は控除されません。
総務省が2026年3月の資料で示したモデル(年収1,000万円・独身または夫婦共働き・給与収入のみ・住宅ローン控除などを受けていない人)では、寄附の上限額は18万円と推計されています(総務省「ふるさと納税について(指定基準に係る告示改正)」令和8年3月24日)。モデルと条件が違えば上限も変わります。
自分の数字の探し方
| 必要な数字 | どこにあるか |
|---|---|
| 住民税所得割額 | 前年に届いた住民税決定通知書(給与天引きの人は勤務先経由の「特別徴収税額の決定通知書」)の所得割額の欄。市民税と県民税を合計します |
| 所得税の税率 | 源泉徴収票の「給与所得控除後の金額」から「所得控除の額の合計額」を引いた課税所得を、国税庁の速算表に当てはめます |
国税庁の速算表(No.2260、令和8年4月1日現在法令等)による税率は、課税所得195万円未満が5%、195万円以上330万円未満が10%、330万円以上695万円未満が20%、695万円以上900万円未満が23%、900万円以上1,800万円未満が33%、1,800万円以上4,000万円未満が40%、4,000万円以上が45%です。
所得割額の読み方の注意: 横浜市は、特例控除額の限度額は「調整控除適用後の所得割額の20%」であり、通知書の年度に調整控除以外の税額控除(住宅ローン控除など)がある場合は、通知書の所得割額がその分減額されて記載されているため、記載額の20%が限度額にならない場合があると説明しています。住宅ローン控除を受けている人は、通知書の数字をそのまま使わず、市区町村に確かめてください。
税率の注意: 総務省は、③の式で使う所得税の税率は、住民税の課税総所得金額から人的控除差調整額を引いた額で求めるため、①の税率と異なる場合があると説明しています。境目の近くにいる人は、低い方の率で計算すると上限が小さく出るので、安全側に倒せます。
上限が変わる条件
上限は「所得割額」で決まるので、所得割額を動かすものがそのまま上限を動かします。
| 条件 | 上限への影響 | 理由 |
|---|---|---|
| 収入が増えた | 上がる | 所得割額が増える |
| 収入が減った・転職で空白期間があった | 下がる | 所得割額が減る |
| 配偶者控除・扶養控除の対象の家族が増えた | 下がる | 所得控除が増え、所得割額が減る |
| 医療費控除などの所得控除が増えた | 下がる | 同上 |
| 住宅ローン控除など税額控除がある | 通知書の数字だけでは判断できない | 通知書の所得割額が控除後の額で記載されるため(横浜市)。市区町村に確認する |
総務省も、受けられる控除の上限は「収入や他の控除等の状況による」とし、具体的な計算は住まいの市区町村の住民税担当に問い合わせるよう案内しています(「よくある質問」Q5)。
前年の通知書は前年の所得の数字です。 今年の収入が前年より下がる見込みなら、前年の数字で計算した上限より少なめに寄附してください。
2027年の寄附から:特例控除に193万円の上限
令和8年度税制改正で、住民税の特例分の控除額に193万円の定額上限が設けられます。総務省の資料では、給与収入1億円相当の人が438万円を寄附した場合の特例控除額が193万円で、令和9年(2027年)の寄附分から適用されるとされています。上限を超えても基本分の控除は受けられ、寄附額自体に上限はありません(総務省「ふるさと納税について(指定基準に係る告示改正)」令和8年3月24日)。
給与収入が1億円に届かない多くの人には影響しない改正ですが、高所得の人は2027年以降、従来の計算式だけで上限を出すと多めに見積もることになります。
申請の窓口と期限
- 上限の確認: 住まいの市区町村の住民税の担当課
- 寄附の期限: 控除は1月〜12月の寄附を1年分として計算します(総務省「よくある質問」Q4)
- 申告: ワンストップ特例なら寄附した翌年の1月10日必着で各自治体へ、確定申告なら翌年3月15日までに税務署へ。手続きの全体の流れはふるさと納税の申し込みから控除までの流れにまとめています
似た制度との違い
- 自治体以外への寄附: 総務省は、ふるさと納税では自治体以外に寄附する場合の控除に加えて「特別な控除」が受けられると説明しています(「ふるさと納税の概要」)。この特別な控除が③の特例分です。また、総務大臣の指定を受けない地方団体への寄附金はふるさと納税の対象外とされています(令和8年3月24日資料)
- 確定申告とワンストップ特例: どちらを使っても、控除される総額の考え方は同じです。ワンストップ特例では所得税分も含めて住民税から差し引かれます(総務省「税金の控除について」)
よくある誤解
- 「年収だけで上限が決まる」: 同じ年収でも、扶養する家族や所得控除の額で所得割額が変わるため、上限は人によって違います
- 「シミュレーターの結果は正確な上限」: 入力した項目以外の控除は反映されません。医療費控除を後から申告する予定があるなら、その分を差し引いて考えます
- 「上限を超えたら寄附が無効になる」: 寄附は有効ですが、超えた分が控除されないだけです
出典
- 総務省「ふるさと納税のしくみ|税金の控除について」 https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_zeisei/czaisei/czaisei_seido/furusato/mechanism/deduction.html
- 総務省「ふるさと納税 よくある質問」 https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_zeisei/czaisei/czaisei_seido/furusato/faq/
- 総務省「ふるさと納税について(指定基準に係る告示改正)」令和8年3月24日 https://www.soumu.go.jp/main_content/001070694.pdf
- 横浜市「寄附金税額控除(ふるさと納税)について」 https://www.city.yokohama.lg.jp/kurashi/koseki-zei-hoken/zeikin/y-shizei/kojin-shiminzei-kenminzei/kihukin.html
- 国税庁「No.2260 所得税の税率」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2260.htm
(いずれも2026年9月24日に確認)