貯金の目標は、「みんながいくら貯めているか」ではなく、「何に・いつ・いくら使うか」から逆算して決めます。手順は、①使う予定を書き出す、②それぞれの金額と時期を決める、③目標額を残りの月数で割って毎月の額を出す、④使う時期で1年以内・1〜5年・5年より先の3つに分けて置き場所を変える、の4つです。目的と時期が決まると、毎月いくら貯めればよいかと、どの口座に置けばよいかが同時に決まります。平均の貯蓄額は参考にはなりますが、あなたの家庭に必要な額とは別のものです。以下で、世論調査の数字も確かめながら、順に説明します。

漠然と貯めても目標が決まらない理由

「とりあえず貯めておく」やり方がうまくいかないのは、次の2つが起きるからです。

いくら貯まれば十分かが分からない。 目標額が無いと、今月の貯金が多いのか少ないのかを判断できません。その結果、出費が多かった月に「今月はいいか」と貯金を止める判断が簡単にできてしまいます。

使う時期の違うお金が1つの口座に混ざる。 来年の車検代と20年後の老後資金が同じ口座に入っていると、近い出費のたびに残高が減り、遠い目的のお金がいつまでも増えません。どこまで使ってよいかの線が引けないことが原因です。

逆に言えば、目的ごとに金額と時期を決め、使う時期で置き場所を分けると、この2つは両方とも解消します。

他の家庭の数字はどこまで参考になるか

目標を考えるとき、平均の貯蓄額を調べる人は多いと思います。金融経済教育推進機構(J-FLEC)の「家計の金融行動に関する世論調査(2025年)」の数字は次のとおりです。

項目二人以上世帯単身世帯
金融資産の保有額の平均(金融資産を持たない世帯を含む)1,940万円919万円
同じく中央値720万円130万円
金融資産を持たない世帯の割合15.7%30.1%
目標にしている金融資産残高(回答の平均)3,926万円2,624万円

(J-FLEC「家計の金融行動に関する世論調査(2025年)」二人以上世帯調査・単身世帯調査の時系列データと単純集計。調査時期は2025年6月20日〜7月2日、インターネットモニター調査。この調査の「金融資産」には、預貯金のうち日常的な出し入れ・引き落としに備えている部分は含みません)

平均と中央値の差が大きいのは、平均が一部の多く持つ世帯に引き上げられるためです。中央値は、保有額の少ない順に並べたときにちょうど真ん中にいる世帯の額で、調査も「世帯全体の実感により近い数字」としています。

ただ、これらはどれも「他の家庭がいくら持っているか」の数字で、あなたの家庭が何にいくら必要かとは関係がありません。目標は、次の手順で自分の予定から作ります。

目的を書き出すときのチェックリスト

同じ調査で、金融資産を持つ理由(3つまで選ぶ)として多かったのは次の項目です。書き出すときの抜け漏れの確認に使えます。

保有の目的二人以上世帯単身世帯
老後の生活資金にあてるため62.3%55.2%
病気や不時の災害のときに備えるため44.0%41.6%
旅行、レジャーの資金にあてるため19.0%18.6%
こどもの教育資金にあてるため18.0%2.2%
耐久消費財(自動車、家具、家電等)の購入資金にあてるため10.2%9.5%
住宅(土地を含む)の取得または増改築などの資金にあてるため8.1%5.9%

(金融資産を持っている世帯の中での割合。J-FLEC「家計の金融行動に関する世論調査(2025年)」)

自分の予定を書き出すときは、次の項目を順に確かめます。

  • 急な病気・けが・失業に備えるお金(生活費の数か月分)
  • 1年以内に払うことが決まっているもの(車検、自動車税、帰省、家電の買い替え、年払いの保険料など)
  • 数年以内の大きな出費(車の買い替え、引っ越し、結婚、住宅の頭金など)
  • 子どもの進学に合わせた出費(入学金、授業料など)
  • 老後の生活費の不足分
  • 旅行や趣味など、なくても困らないが使いたいもの

目標額の決め方:4つの手順

手順1:予定を「何に・いつ・いくら」で1行ずつ書く

チェックリストで出てきた予定を、次のような表にします(数字は説明のための仮のものです)。

何にいついくらいま貯まっている額
急な出費への備えすぐ60万円30万円
車検1年後12万円0円
車の買い替え4年後150万円20万円
子どもの大学入学12年後200万円10万円

金額は、分かるものは見積もりや過去の請求書から、分からないものは提供元が公表している料金や学校の募集要項などで確かめます。老後のように先が長く金額が決めにくいものは、いったん仮の額を置き、年に1回見直す前提で進めます。

手順2:毎月の額を出す

目的ごとに、(目標額 − いま貯まっている額)÷ 残りの月数で毎月の額を出します。

何に計算毎月の額
急な出費への備え(60万 − 30万)÷ 12か月で貯める場合2万5,000円
車検12万 ÷ 12か月1万円
車の買い替え(150万 − 20万)÷ 48か月約2万7,000円
子どもの大学入学(200万 − 10万)÷ 144か月約1万3,000円
合計約7万5,000円

賞与がある場合は、賞与から入れる額を先に引いてから月数で割ると、毎月の負担を下げられます。

手順3:合計が払える額かを確かめる

合計が、いまの家計から無理なく出せる額かを確かめます。参考として、先の調査で「過去1年間に手取り収入から金融資産に振り分けた」世帯は、金融資産を持つ二人以上世帯の38.4%、単身世帯の32.4%で、振り分けた世帯の平均は手取り収入の約35%(二人以上世帯)、約38%(単身世帯)でした。振り分けなかった世帯のほうが多く、平均は振り分けた世帯だけのものなので、「このくらい貯めるのが普通」という基準としては使えません。

合計が出せない場合は、次の順で調整します。

  1. 時期を動かせるものは後ろにずらす(車の買い替えを5年後にする、など)
  2. 金額を下げられるものは下げる(予算の上限を決める)
  3. 支出を減らして貯める額を増やす(固定費の見直しは、一度手続きすれば効果が続きます)

急な出費への備えと、1年以内に払うことが決まっているものは、後ろにずらさずに先に確保します。

手順4:使う時期で3つに分けて、置き場所を決める

目的を使う時期で3つに分け、それぞれ性質の合う置き場所を選びます。

使う時期入れるもの置き場所に求めること置き場所の例
1年以内・すぐ急な出費への備え、車検、税金、帰省すぐ引き出せる、額が減らない生活費と別の普通預金
1〜5年車の買い替え、引っ越し、住宅の頭金額が減らない、途中で崩しにくい定期預金、積立定期預金
5年より先子どもの進学、老後時間をかけて積み立てられる定期預金など。長期の制度を使う場合は条件を確かめる

5年より先のお金について、iDeCo(個人型確定拠出年金)は老後の資産形成のための制度で、原則60歳になるまで引き出せません(iDeCo公式サイト「iDeCoの加入資格・掛金・受取方法等」)。NISAの口座で持つ商品はいつでも売却できますが、投資信託や株式には値動きがあり、売る時期によっては投じた額を下回ります(金融庁「NISAを知る」)。どちらも、使う時期と、減ってもよい額かどうかを確かめてから判断するもので、この記事ではどれを使うべきかは勧めません。

預金で持つ場合、利息のつく普通預金や定期預金は、1金融機関ごとに預金者1人あたり元本1,000万円までと破綻日までの利息等が預金保険で保護されます(金融庁「預金保険制度」)。

毎月の入金は、給料日の直後に自動で移す設定にすると、手順2の額がそのまま守られます。

実行時の落とし穴

目標を老後の1つだけにする。 数千万円という遠くて大きな目標だけだと、毎月の進み具合が小さく見えて続きません。1年以内の目標を1つ入れておくと、達成と見直しの区切りができます。

口座を目的の数だけ作る。 目的ごとに口座を作ると、入金の設定や残高の確認が増え、管理が続かなくなります。口座は時期で3つ程度にまとめ、口座の中の内訳は表で管理します。

近いお金を値動きのある商品に入れる。 1〜2年で使う予定のお金が、使う時期に値下がりしていると、予定の出費に足りなくなります。使う時期が近いお金ほど、額が減らない置き場所に入れます。

「急な出費」と「予定された出費」を混ぜる。 車検や自動車税のように時期が分かっている出費を、急な出費への備えから払っていると、備えが減ったままになります。予定された出費は、1年以内の枠の中で別に数えます。

一度決めた目標を見直さない。 収入や家族の状況が変わると、必要な額も時期も変わります。年に1回、手順1の表を更新し、毎月の額を計算し直します。

まとめ

貯金の目標は、他の家庭の平均ではなく、自分の予定から「何に・いつ・いくら」で作ります。目標額を残りの月数で割れば毎月の額が決まり、使う時期で3つに分ければ置き場所も決まります。まずは手順1の表を1枚作るところから始めてください。貯金の習慣づくりに関する記事は、家計と貯蓄の記事一覧にまとめています。

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出典

(いずれも2026年9月に確認)