引越しの総額は、旧居の退去費用・新居の初期費用・引越し業者代の3つに分けて見積もると、抜け漏れが出にくくなります。このうち仲介手数料は法律で上限が決まっていますが、敷金・礼金・保証会社の保証料・火災保険料・鍵交換費用は、物件や契約する会社によって金額が違い、公的に決まった相場はありません。この記事では、それぞれの項目が何で決まるかと、確認する場所を整理します。
比べる条件を先に決める
- 法律で上限が決まっている項目か: 決まっているのは仲介手数料だけです
- 交渉・比較の余地があるか: 火災保険や保証会社は、貸主・管理会社の指定がある場合とない場合があります
- 支払うタイミング: 契約時にまとめて払うものと、引越し業者に別途払うものを分けて把握します
新居の初期費用の内訳
| 項目 | 内容 | 金額の決まり方 |
|---|---|---|
| 敷金 | 家賃滞納や退去時の原状回復費用に充てるための預け金。退去時に精算され、残りがあれば返還される | 法律上の上限はなく、貸主が物件ごとに設定する |
| 礼金 | 貸主に支払う謝礼で、退去時に返還されない | 法律上の上限はなく、貸主が物件ごとに設定する |
| 仲介手数料 | 宅建業者への報酬 | 宅地建物取引業法にもとづく国土交通省の告示で上限あり(下記) |
| 前家賃 | 入居月の家賃(日割りの場合あり)と、翌月分の家賃をあらかじめ支払うもの | 契約開始日と家賃額から計算される |
| 火災保険料 | 賃貸物件向けの火災保険(家財保険)。貸主・管理会社が特定の保険への加入を契約条件にしている場合が多い | 保険会社・補償内容によって異なる。契約書類で確認する |
| 保証会社の保証料 | 連帯保証人の代わりに、家賃保証会社を利用する場合の初回・更新の費用 | 保証会社・審査内容によって異なる。契約書類で確認する |
| 鍵交換費用 | 入居前に鍵(シリンダー)を交換する費用 | 契約書の特約で借主負担とされていることが多い(詳細は後述) |
仲介手数料の上限: 国土交通省の告示(建設省告示第1552号「第四 貸借の媒介に関する報酬の額」、最終改正令和6年6月21日国土交通省告示第949号)では、宅建業者が賃貸の媒介で依頼者の双方から受け取れる報酬の合計額は、借賃の1か月分の1.1倍(消費税等相当額を含む)が上限です。このうち、居住用建物では、依頼者の一方から受け取れる額は、媒介の依頼を受ける際にその依頼者の承諾を得ている場合を除き、借賃の1か月分の0.55倍が上限とされています。承諾があれば、借主から1か月分(消費税等相当額を含む)を受け取ることもできます。
鍵交換費用について: 国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」では、破損や紛失がない場合の鍵の取替えは「入居者の入れ替わりによる物件管理上の問題であり、賃貸人の負担とすることが妥当」とされています。ただし、賃貸借契約は契約自由の原則にもとづくため、民法や消費者契約法に反しない範囲で、特約により借主負担とすることも可能です。実際には、入居時の契約書で借主負担の特約が結ばれているケースが多く見られます。契約前に、重要事項説明書や契約書のどこに鍵交換費用の記載があるか確認してください。
旧居の退去費用
原状回復にかかる費用のうち、経年劣化・通常損耗にあたる部分は貸主負担、借主の故意・過失や善管注意義務違反にあたる部分は借主負担というのが、国土交通省のガイドラインの原則です。
引越し業者代
引越し業者に支払う料金は、荷物の量・移動距離・時期(繁忙期かどうか)・オプション(荷造り代行など)によって業者ごとに個別見積もりで決まり、公的に定められた相場はありません。国土交通省の資料では、引越しは例年3月から4月にかけて依頼が集中し、3月の引越し件数は通常月の約2倍になるとされています。 同省・全日本トラック協会は、この時期を避けた分散引越しを呼びかけており、実際に時期をずらした利用者から「3月末の土日の引越しと比べて代金が安くなった」という声が紹介されています。具体的な値上がり幅を示す公的な統計は確認できていないため、繁忙期に引っ越す場合は早めに複数社から見積もりを取って比べることをおすすめします。
条件ごとの結論
- 初期費用を抑えたい: 敷金・礼金は貸主が物件ごとに決めるため、同じエリアでも物件によって差があります。仲介手数料は上限が決まっているので、上限を超える請求がないかを重要事項説明書で確認してください
- 繁忙期(3〜4月)に引っ越す: 早めに複数社から見積もりを取り、日程に余裕があれば平日や時期をずらすことも検討してください
- 鍵交換費用に納得できない: ガイドラインでは破損・紛失がなければ貸主負担が原則です。契約書の特約の記載を確認し、疑問があれば契約前に貸主・管理会社に確認してください
よくある誤解
- 「仲介手数料は必ず家賃1か月分」: 承諾がなければ、依頼者の一方から受け取れる額は借賃の0.55か月分が上限です。1か月分を請求される場合は、承諾の有無を確認してください
- 「敷金・礼金にも法律上の上限がある」: 上限があるのは仲介手数料だけです。敷金・礼金は貸主が物件ごとに設定します
- 「鍵交換費用は必ず借主負担」: ガイドラインの原則は貸主負担です。借主負担になっているのは、契約書の特約によるものです
出典
- 国土交通省・国土交通省告示「宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買等に関して受けることができる報酬の額」(建設省告示第1552号、最終改正令和6年6月21日国土交通省告示第949号)第四 https://www.mlit.go.jp/tochi_fudousan_kensetsugyo/const/content/001750143.pdf
- 国土交通省住宅局「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)」 https://www.mlit.go.jp/common/000991391.pdf
- 国土交通省「引越時期の分散に御協力をお願いします!」(令和6年1月24日、令和6年3月更新) https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001719501.pdf
(いずれも2026年9月25日に確認)