回線が遅いとき、最初に検討すべきは乗り換えではありません。設定と機器で無料で直る範囲が意外に広いためです。ここでは、お金のかからないものから順に、原因を切り分ける手順を示します。上から順に確認すれば、乗り換えが必要かどうかが最後に分かります。
手順1:有線でつないで測り、原因が回線側かWi-Fi側かを分ける
最初にやることは、パソコンをLANケーブルでルーターに直接つないで速度を測ることです。
- 有線で十分な速度が出る場合:回線そのものは問題ありません。原因はWi-Fi(手順3)にあります。
- 有線でも遅い場合:原因は配線・接続方式・建物・契約のどれかです(手順2、4、5)。
この切り分けをせずに機器を買い替えると、原因と関係ないところにお金を使うことになります。測定は平日の昼間と、利用が集中する21時前後の両方で行ってください。時間帯で大きく変わるなら混雑、いつ測っても同じなら上限側の問題です。
手順2:LANケーブルと端子の規格を確かめる
有線でも遅い場合、ケーブルと端子が上限になっていることがあります。
| 見るところ | 遅くなる条件 | 確認方法 |
|---|---|---|
| LANケーブル | カテゴリ5(CAT5)は100Mbpsまで | ケーブルの外皮に「CAT5e」「CAT6」などの印字がある |
| ルーターのLAN端子 | 100BASE-TXまでの端子は100Mbpsが上限 | 本体の仕様表、または端子まわりの表示 |
| パソコン側の端子 | 同上 | 仕様表 |
1Gbpsの契約をしていても、経路のどこか1か所が100Mbpsなら、そこが全体の上限になります。ケーブルは数百円で替えられるため、印字がCAT5だった場合はここから直してください。
手順3:Wi-Fiの帯と規格を見直す
有線では速いのに無線が遅い場合、原因はWi-Fi側です。無料でできることが3つあります。
- 5GHz帯につなぎ替える。 多くのルーターは2.4GHzと5GHzの2つの電波を出しています。2.4GHzは壁を回り込みやすい代わりに、電子レンジやBluetooth機器と干渉しやすく、速度が出にくくなります。ネットワーク名(SSID)の末尾が「-A」「-5G」などになっているほうが5GHzであることが多いので、そちらにつなぎ替えて測り直してください。
- ルーターの置き場所を変える。 床置き、金属ラックの中、水槽や電子レンジの近くは電波が弱くなります。部屋の中央寄り・床から1m以上の高さに置くだけで変わることがあります。
- 同時につないでいる機器を減らして測る。 家族の端末が一斉に動画を見ている時間帯は、回線ではなくWi-Fiの帯域を分け合っている状態です。
これらを試しても無線だけが遅い場合は、ルーターのWi-Fi規格が古い可能性があります。ここで初めて買い替えを検討してください。
手順4:接続方式がIPoEかPPPoEかを確認する
夜になると遅くなるという症状に、はっきりした仕組み上の原因があります。
PPPoE方式では、インターネットへ出るときに「網終端装置」という設備を経由します。利用者が集中する時間帯にはこの装置が混雑しやすく、通信速度が低下します。一方、IPoE方式ではこの装置を経由せず、VNEと呼ばれる事業者のルーターを通ってインターネットに接続されるため、混雑が起きる箇所が少なくなります(NTT東日本公式サイトの解説、2026年9月確認)。
夕方から夜にかけて遅くなるのは、仕事や学校を終えた利用者が一斉に動画やオンラインゲームなど帯域を多く使うサービスを利用し、ネットワークに負荷がかかるためです。つまり自分の家の機器をどれだけ良くしても、経路が混んでいれば速くなりません。
確認と切り替えの手順は次のとおりです。
- 契約しているプロバイダの会員ページで、IPv6 IPoE(事業者により「v6プラス」「IPv6オプション」など名称が異なります)に対応しているか、申し込み済みかを確認します。
- 未申し込みなら申し込みます。多くの場合は無料で、月額は変わりません。
- ルーターがIPoEに対応しているかを確認します。 対応していない機器では、申し込んでもPPPoEのままになります。ここだけは買い替えが必要になることがあります。
- 切り替え後、同じ時間帯に測り直して比較します。
乗り換えを検討するのは、プロバイダがIPoEに対応していないと確認できてからで十分です。
手順5:建物の配線方式と契約プランの上限を確認する
ここまでで直らない場合、自分では変えられない上限に当たっている可能性があります。
- 建物内の配線方式:集合住宅では、共用部から各戸への配線が光ファイバー(光配線方式)か、既存の電話線(VDSL方式)か、LANケーブル(LAN配線方式)かで上限が変わります。LAN配線方式は最大速度が1Gbps(物件によっては100Mbps)にとどまる場合があり、複数の住戸で1本の光回線を共有するため、混雑時に速度が落ちやすい仕組みです(NURO光公式サイトの解説、2026年9月確認)。VDSL方式の場合、建物側の設備が変わらない限り速度は改善しません。管理会社か回線の提供元に問い合わせて確認してください。
- 契約プランの上限:最大1Gbpsのプランで契約していれば、それ以上は出ません。10Gbpsのプランが提供されている地域もありますが、対応エリアが限られ、ルーターやパソコン側も対応している必要があります。
- 同一時間帯の他の入居者の利用:マンションタイプは建物内で設備を共有するため、同じ建物の利用状況に影響されます。
このいずれかが原因だと分かった場合に、初めて乗り換えが選択肢になります。VDSL方式の建物であれば、光回線を替えても上限は変わらないため、ホームルーターなど別の方式を比べる意味が出てきます。
確認の順番のまとめ
| 順番 | 確認すること | 費用 |
|---|---|---|
| 1 | 有線でつないで測り、Wi-Fi側か回線側かを分ける | 0円 |
| 2 | LANケーブルと端子の規格 | 0円〜数百円 |
| 3 | 5GHz帯への切り替え・ルーターの置き場所 | 0円 |
| 4 | IPoEへの申し込み(ルーターの対応確認を含む) | 0円〜(機器の買い替えが必要な場合あり) |
| 5 | 建物の配線方式・契約プランの上限 | 確認は0円 |
1から4までで直る例は珍しくありません。乗り換えの判断は、5まで確認してからで遅くありません。
契約前の落とし穴
- 「最大1Gbps」は理論値です。 ベストエフォート型のサービスで、実際に出る速度を保証するものではありません。乗り換え先の広告値も同じ前提で読んでください。
- 速度測定サイトの数値は測るたびに変わります。 1回の結果で判断せず、時間帯を変えて複数回測った値で比べてください。
- ルーターの買い替えは、原因を特定してからにしてください。 建物の配線方式が上限になっている場合、どれだけ高性能な機器を買っても変わりません。
- IPoEの名称は事業者ごとに違います。 「対応していない」と思っても、別の名前で提供されていることがあります。会員ページで見つからなければ、窓口に「IPv6 IPoE接続に対応しているか」と直接聞くのが確実です。
- 乗り換えても混雑そのものは無くなりません。 利用が集中する時間帯に速度が落ちること自体は、どの事業者でも起こります。改善できるのは、混雑しやすい経路を避けられるかどうかの部分です。