「今月もカツカツ…」「将来のために何かしたいけど、何から始めればいいの?」そんな悩みを抱えていませんか?日々の生活費や将来への漠然とした不安は、多くの人が感じていることです。しかし、そんな不安を軽減し、心穏やかな毎日を送るための一つの答えが「エマージェンシーファンド」を準備することです。
エマージェンシーファンドとは、その名の通り「緊急時のためのお金」。つまり、予期せぬ失業、病気やケガ、家族の緊急事態など、万が一の事態に備えるための資金のことです。この記事では、なぜエマージェンシーファンドが必要なのか、どれくらいの金額を準備すれば良いのか、そしてどうやって貯めていけば良いのかを分かりやすく解説します。
エマージェンシーファンドはなぜ必要?3つの大きな理由
消費が推奨される現代社会において、貯蓄の本当の力を忘れがちです。しかし、現金を持っていることは、支出からは決して得られない「機会」と「安心」をもたらします。エマージェンシーファンドを持つことは、あなたの人生をより良い方向へ導く重要なステップです。
- 予期せぬ事態への対応力:人生には、突然の病気、事故、失業など、予測できない出来事が起こり得ます。そんな時、エマージェンシーファンドがあれば、慌てずに対応でき、精神的な安定を保てます。
- 長期的な資産形成の保護:iDeCoやNISA、株式投資などで将来のために資産運用をしている人も多いでしょう。しかし、急にお金が必要になったからといって、これらの長期投資を不利なタイミングで解約したり、早期引き出しペナルティを払ったりするのは避けたいものです。エマージェンシーファンドは、こうした長期的な資産を守るための「防波堤」の役割を果たします。
- 新たな機会を掴む力:緊急時の備えが十分にあれば、例えば市場が一時的に大きく下落した際に優良な資産を割安で購入するような「機会」にも目を向ける余裕が生まれます。これを「オポチュニティファンド(機会資金)」と呼ぶこともありますが、まずは緊急時の備えであるエマージェンシーファンドをしっかりと構築することが最優先です。
目標額はどれくらい?生活費を基準に考えよう
では、具体的にどれくらいの金額をエマージェンシーファンドとして準備すれば良いのでしょうか。一般的に、ご自身の「1ヶ月分の生活費」を基準に考えます。食費、家賃や住宅ローン、水道光熱費、通信費など、毎月必ずかかる基本的な支出を合計してみましょう。
ステップ1:まずは生活費の3ヶ月分(Good)
最低限の目標として、まずは生活費の3ヶ月分を貯めることを目指しましょう。例えば、1ヶ月の生活費が30万円なら、90万円が目標額となります。これが達成できれば、ある程度の安心感が得られるはずです。
ステップ2:次は生活費の6ヶ月分(Better)
次に目指したいのが、生活費の6ヶ月分です。特に、扶養家族がいる方(お子さんや配偶者など)や、自営業の方、転職の可能性が高い職種の方、ケガのリスクが高い仕事をしている方は、この水準を目指すとより安心です。不測の事態が長引いた場合でも、生活を維持しやすくなります。
ステップ3:理想は生活費の12ヶ月分(Best)
貯蓄に慣れてきたら、最終目標として生活費の12ヶ月分を目指しましょう。ここまで貯蓄できれば、精神的な余裕は格段に大きくなります。高収入の方の中には、特定の目標額(例えば1000万円など)を設定して、それを安全な形で確保しているケースもあります。高収入であっても、すべての資金を投資に回してしまうと、いざという時の流動資金が不足しがちです。手元に十分な現金を確保しておくことは、どんな収入レベルの方にとっても重要です。
エマージェンシーファンドはどこに置くべき?安全性と流動性が鍵
せっかく貯めたエマージェンシーファンドも、いざという時に使えなければ意味がありません。保管場所を選ぶ上での重要なポイントは「安全性」と「流動性(引き出しやすさ)」です。
- 株式や投資信託はNG:これらは価格変動リスクがあり、必要な時に元本割れしている可能性があります。また、現金化に時間がかかる場合もあります。
- 引き出しにペナルティがあるものも避ける:特定の期間預けないとペナルティが発生するような金融商品も、緊急用資金の置き場所としては不向きです。
- おすすめは銀行の普通預金や定期預金:元本が保証されており、必要な時にすぐにATMや窓口で引き出せる銀行の普通預金口座が最も一般的です。金利は低いですが、安全性と流動性を優先しましょう。生活口座とは別に、エマージェンシーファンド専用の口座を作っておくと管理しやすくなります。ある程度まとまった金額であれば、普通預金よりは金利が期待できる定期預金も選択肢の一つです。
大切なのは、リスクを抑え、必要な時にすぐに使える状態にしておくことです。
貯蓄のモチベーションを維持する10の秘訣
「貯蓄が大切とは分かっていても、なかなか続かない…」そんな方もいるかもしれません。貯蓄のメリットを具体的にイメージすることで、モチベーションを高く保ちましょう。以下のリストを参考に、現金の力を感じ、貯蓄が消費よりも心強いものだと実感できるようになるまで、時々読み返してみてください。
エマージェンシーファンドを持つ10のメリット
- 失業や収入減の際にも、家族との生活を守れる。
- 自分や家族の急な病気・ケガなどの医療費や、その他の緊急事態に備えられる。
- 市場が一時的に下落した際など、魅力的な投資のチャンスが巡ってきた時に行動できる(エマージェンシーファンドが十分にある場合)。
- 住宅や車など、大きな買い物をする際に、現金購入をちらつかせることで価格交渉を有利に進められる場合がある。
- 相場が悪い時に、他の投資商品(株式や投資信託など)を無理に売却して損失を出すのを避けられる。
- iDeCoなどの私的年金制度から、やむを得ず早期に資金を引き出す際の税制上の不利益を回避できる。
- 「いざという時のお金がある」という安心感がストレスを軽減し、心身の健康増進につながる。
- お金に関する夫婦やパートナーとの間の揉め事を減らす助けになる。
- 予期せぬ家電の故障や家の修繕など、まとまった出費が必要になった際のクッションになる。
- 市場価格が下落した際に、割安になった資産を購入できるチャンスを掴める可能性がある。
退職後もエマージェンシーファンドは必要?
「退職して年金生活に入れば、いつでも年金口座からお金を引き出せるから、もうエマージェンシーファンドは必要ないのでは?」と考える方もいるかもしれません。確かに、多くの場合、60歳や65歳を過ぎると、ペナルティなしで私的年金(iDeCoや企業型DCなど)を引き出せるようになります(ただし、所得税・住民税の対象にはなります)。
しかし、退職後であってもエマージェンシーファンドは必要です。
退職後の生活設計をしっかり立てていたとしても、予期せぬ出費は起こり得ます。例えば、持ち家の大きな修繕、自身の介護費用の発生、あるいは成人したお子さんやお孫さんへの経済的援助が必要になるケースも考えられます(ある調査では、多くの親が「成人した子供のために大きな経済的犠牲を払うことも厭わない」と回答しています)。
年金や退職金といった計画的な収入とは別に、こうした不測の事態に備えるための現金を確保しておくことは、安心して老後の生活を送るために非常に大切です。退職を控えた数年前から、この種の現金準備口座を意識して準備しておくことは、賢明な老後準備の一つと言えるでしょう。
エマージェンシーファンドの準備は、一朝一夕にできるものではありません。しかし、今日から少しずつでも始めることで、将来の安心感は大きく変わってきます。まずはご自身の生活費を把握し、小さな目標からスタートしてみてはいかがでしょうか。